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真鍮は錆びる?

真鍮 は腐蝕しにくいとはいえ、 錆び ます。
錆というと一般的なイメージは鉄にできる赤茶のもの。
しかし真鍮の錆は、緑青(ろくしょう)といい、その名前通りの青みがかった緑色です。

【 はじめに 】

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錆というと、どんなものを想像しますか?

真鍮の事について、これまで何度かご紹介してきました。

真鍮 を扱っていると聞かれることが多いのが、先日ご紹介した「臭い・匂い」のこと。

そして「 錆びる 」かどうかということ。

一般的な錆というと、皆さんはどんなものを想像するでしょうか?

大抵の方は、鉄にできる赤茶色のものを想像するのではないでしょうか。

しかし中にはシルバーアクセサリーの色の変化をイメージして、その変化を「錆」と表現する方も案外多いのです。

このあたりのことも含めて、 真鍮 は 錆びる のかについてご紹介していきますね。

【 そもそも錆って? 】

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錆って一体どんなもの?

ではそもそも錆って何でしょう?

錆と言うのは金属が腐蝕することで作られる腐蝕生成物のこと。

私たちのイメージとは裏腹に、実は錆と一言で言っても成分も色もとてもたくさんあるんです。

その色は赤錆、黒錆、白錆、緑錆、茶錆、青錆、黄錆などなど…。

これらは同じ色の錆だとしても、発生経緯や成分が違ったりします。

錆を分類するような場合は、色で分ける方法、成分で分ける方法、発生する金属で分ける方法、発生メカニズムで分ける方法、腐蝕の種類などで分類する方法などがあるようです。

錆の色はとにかくたくさん。

近頃の工業用の材料や日用品は基本的には単一の物質のみで作られることは稀。

加工しやすくするためや、強度などの面から合金として使用されたり、メッキや塗装などの処理が施されています。

そのため本体そのものからよりも、表面の塗料や合金のうちの一素材などから錆が発生したりすることもしばしば。

錆の正体が何なのか、放置しても問題ないのかどうか、判断が難しいというのもあります。

・鉄や銅に発生する赤錆 

鉄鋼材料に発生する赤錆は材料を少しずつ浸食します。

そのままにしておくと材料が劣化してボロボロになります。

ただ赤錆が変化して安定すると保護被膜のようになり、材料自体を守ることがあります。

赤錆のままだと効果はありませんが、耐食性のある錆の層ができれば、腐蝕を抑えることができます。

しかし銅に発生する赤錆であれば、もともと保護被膜として銅本体を守ります。

大気中のみならず、海中や水中でもある程度防ぐ機能を持っています。

・銅にできる青錆 (青緑)

銅にできる錆は酸化銅。

その酸化銅の上に形成される錆が緑青です。

同じ色、同じ銅に見られるものでも、異なる錆の場合もあります。

緑青にも耐食性があり銅を腐蝕から守る保護被膜として機能します。

・ニッケルや銅にできる緑錆 

青錆と色が近いですが、「パティナ」と呼ばれるのが緑錆。

鉄にでる緑錆は、酸素の少ない場所で稀に見られるそう。

ですが空気に触れる事ですぐに赤褐色に変化してしまいます。

・鉄にできる黒錆 

鉄に発生する黒錆。

これは酸化物の被膜。

錆の発生には通常水分が関わっていますが、この黒錆は発生の際に水が関わらない「乾食」という錆。

錆という名称でありながら鉄本体への浸食を抑える機能を持っているので、良性の錆とも呼ばれます。

・アルミニウムや亜鉛にできる白錆

アルミニウムに見られる白錆は表面に生成された酸化アルミニウムなどが水和酸化物に変化したもの。

アルミの白錆の下には通常酸化アルミニウムの薄い膜が作られます。

これによってアルミ自体は守られますが、酸化膜が破壊されると本体までもが腐食してしまいます。

亜鉛に見られる白錆の場合は、亜鉛表面に作られる水酸化亜鉛が二酸化炭素と反応し生成される塩基性炭酸亜鉛。

これも錆を防ぐ役割を持っています。

白錆自体も、腐食から金属を守る作用があります。

・鉄や銅にできる茶錆 

鉄や銅に出る錆は茶色。

これには同じように見えても、二種類のタイプがあるそう。

赤錆のように鉄を浸食し破壊するタイプと、黒錆のように表面に発生することで保護被膜として作用するもの。

浸食・破壊するタイプは明るい茶色がほとんど。

保護被膜として作用するのはこげ茶や濃い茶色のもの。

・鉄や亜鉛メッキ処理をした鋼にできる黄錆 

鉄鋼材料に見られることがある錆。

塗装や塗膜処理にかかわる鉄鋼製品に見られる事が多いそう。

【 緑青(ロクショウ)という「錆」 】

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真鍮にできる錆は…

真鍮は銅と亜鉛の合金です。

先ほどもでてきた緑青は真鍮に出てくる錆。

これは以前にもご紹介していますが、汚れや水分がついた状態で放置すると真鍮の表面に出てきます。

この緑青が出てしまうと残念ながらその真鍮は錆が発生してしまっているということになります。

緑青自体は無害ではあるものの、その外見から、昭和末期ぐらいまでは有毒だと思われていました。

百科事典ですらそのような表記だったというのですから驚きですね。

しかしそんな不名誉な言われも、厚生省が正式に毒性がないと発表するまで信じられていたというのです。

記録によれば昭和56年から3年間動物実験が行われ、昭和59年に「無害に等しい」と認められたとのこと。

(無害である、と言い切る言い方ができないのは、過剰に摂取することは何であれ害を及ぼす可能性もあるため)

◇詳しくはこちらをどうぞ→

緑青や銅や亜鉛は体には基本的に無害です。

過去には銅の精錬場で中毒症状が多く見られたそうですが、実際には銅の鉱物に含まれるヒ素が原因だったそう。

真鍮の材料である銅も亜鉛も毒性はありません。

ましてや銅イオンと亜鉛イオンにも毒性はありませんし、亜鉛イオンは人にとっての必須ミネラルの1つでもあります。

真鍮に対して一つだけ注意すべき点としてあげるとすれば、汗や水分などと反応した際に引き起こされる可能性のある金属アレルギーです。

汗や水分が金属と反応することで金属から金属イオンが溶け出し、人間の免疫機能が過剰に反応した際に起こるのがアレルギー。

銅イオンや亜鉛イオン、ましてや緑青もアレルギーの原因となりえます。

◇金属アレルギーに関してはコチラをどうぞ→

【 シルバー製品の「錆」? 】

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硫化?それとも酸化?

ポイントは「硫化」と「酸化」

少しアクセサリーを勉強した方であれば知っているかと思いますが、シルバーアクセサリーの色の変化は正確に言うと「錆」ではないのです。

あれは「硫化」という変化。

しばらく着用しないで置きっぱなしにしたり、アクセサリーを着けたまま温泉に入ってしまうと、シルバー製品は真っ黒になってしまうことがあります。

これはシルバーが硫黄と反応したことで起きる変化です。

硫黄は温泉の成分の中には入っているものもありますし、空気中にも僅かですが存在します。

そして、人の皮脂に含まれるたんぱく質の成分中にも硫黄分が含まれます。

一般的に錆といわれるのは「酸化」という変化。

これは釘などが錆びてボロボロになった状態を指します。

銀や真鍮が酸化するのは、空気中の酸素がある中で高温で加熱された時。

(金属加工する際は高温のバーナーで熱を加えますが、そのような時に金属の酸化が起こります。)

銀や真鍮は鉄と違い、通常の条件下で酸素を吸収したり酸化したりはしないのです。

硫黄と反応することで起こる変化が、「硫化」。

酸素と反応することで起こる変化が、「酸化」。

シルバーに見られるような硫化はもちろん真鍮にも見られます。

最初はピカピカでも、段々と表面がくもってきて、黒っぽくなります。

真鍮の鮮やかだったゴールドカラーも、落ち着いた雰囲気に。

そしてこの変化によって金属特有のにおいが抑えられるというメリットもあります。

◇真鍮のにおいを抑える方法→

こういった変化が嫌ということであれば、真鍮にメッキをかけていただくか、お手入れを毎日していただくかになってしまうのですが…

そういった方には残念ながらあまり向かない素材かもしれません。

ですが、そういった雰囲気の変化を楽しめる方には、愛着を持って育てていただける素材の1つだと思います。

【 まとめ 】

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錆と一言で言っても役割のあるものも…

真鍮 は 錆びる ?

今回は真鍮は錆びるのか、ということについてご紹介してきました。

錆と一言で言ってもいろんな種類があるんですね。

そして金属自体を守るための錆と、金属を破壊する錆があるということ。

真鍮に出る錆は基本的には真鍮の銅成分を守るために出てくる「緑青」。

しかしこれが出てくると、真鍮中の亜鉛成分自体は脆くなってしまう可能性があるのです。

そうなってしまうと、脆くなった金属を元に戻すことはできません。

ですから、錆が出る状態になるまで放置してしまうのは良いこととは言えないですね。

(真鍮の雰囲気を出すためにあえて緑青を出した状態で使用する方もいらっしゃいますので、そのあたりは自己判断で注意しながらご使用いただければと思います。)

最後までお読みいただきありがとうございました!