You are currently viewing スプーンリング
corbata pajaritaのスプーンリングの写真

 スプーンリング についてご紹介していきます。

【 はじめに 】

Image-of-cutlery-pic

 スプーンリング を知っていますか?

スプーンリングはその名の通り、スプーンをリングに加工したものです。

「スプーンで指輪を作る」と聞くと、何もスプーンで作らなくても…

と違和感を覚える方もいらっしゃるでしょうか。

有名なところだとティファニーやマルタンマルジェラの元デザイナーが立ち上げたブランドGabyのスプーンリング。

レアなものだと、あの世界的に有名な時計メーカーであるロレックスの購入者にのみ渡されたノベルティのスプーンで作られたというものもあるのです。

元々はヴィンテージの銀食器のスプーンで作られたこのリング。

銀食器のスプーンというと、美しい装飾がとても特徴的。

アールデコ調のデザインが多く、植物や花など曲線を多用しています。

中でも特に高価なものだと宝石があしらわれていたりします。

現在のスプーンを見ていると考えられない高級さですね。

私も初めて見たときはその美しい模様に目を奪われたのを覚えています。

いつか私も自分でスプーンリングを作りたい、そう憧れるだけの魅力が詰まったアイテムでした。

今回はそんなスプーンリングにスポットを当てていきますね。

【 スプーンリングの始まりは…】

proposal-photos

そんなスプーンリングの始まりはというと…。

ずばり、盗品です。

こう書いてしまうと身も蓋もないんですが…実は愛情の為の盗みから生まれたアイテムなのです。

少し、ロマンティックな感じ、してきましたか?

一説によると遡ること17世紀 イギリス・フランス。

この当時貴族などの一部の富裕層だけが銀食器を使うことができました。

そしてそんな富裕層の家で召使いとして働いていた一人の男性には、結婚を申し込みたいと考えている女性がいました。

ですが彼には婚約指輪を買えるような稼ぎはなく…彼はお相手の女性に喜んでもらいたい一心で、雇い主の家から銀のスプーンを盗みそれを指輪に加工するに至ったのです。

このアイディアは当時の同じような状況の人たちの中ですぐに広まることとなり、裕福な家からは銀のスプーンがどんどん盗まるという事態に。

ですが物事はそううまくは運びません。

先ほども書いたように、銀食器を持つことが当時の富裕層のステータスの1つでもあります。

そのため多くの富裕層は、自身の紋章やイニシャルを銀食器に彫っていたのです。

盗まれた側だって、銀食器は自身の大切な財産。

黙ってはいられないので紋章やイニシャルを手掛かりに捜査をし、多くの人が捕まったといいます。

この時代は特に経済的な格差が大きかったので、愛する女性と結婚をする為に銀食器はやむを得ず盗まれ、加工されたのです。

なんともやるせない気持ちにさせられますが、銀のスプーンというのは元来「幸運のお守り」とされてきました。

ですので愛する女性にお守りとして身に着けてもらいたいという、男性側の心遣いもあったのかもしれませんね。

【 その後のスプーンリング 】

hippie-image-photo

かつてはプロポーズの為に盗んだ銀食器で加工されたスプーンリング。

時がながれて1960年代になると、多くのヒッピー達の指を飾るようになったのです。

ヒッピーというと長い髪に髭、そしてベルボトムが定番イメージ。

彼らは第二次世界大戦が終わり、以前までの抑圧されていて保守的なキリスト教に対するカウンターカルチャーとして生まれたムーヴメント。

1955年のベトナム戦争の惨状を目のあたりにした人々の反戦運動の高まりと相まって、このムーブメントは大きな流れを生み出したのです。

そんな彼らは社会から疎外されていると感じ、物質主義の支配からの解放を目指しました。

この動きが独特なライフスタイルやファッションを作りだしたのです。

物質主義からの解放を目指した彼らなので、既製品ではなく手作りであったり、リメイクした洋服やアクセサリーを作ることが流行するのも頷けます。

そういった風潮の中で、身近な生活用品であるスプーンからリングを作り、身に着けるというのは、彼らにとってごくごく自然な流れだったのかもしれません。

中には小遣い稼ぎの一環で、少年たちが祖父母や両親のコレクションである銀食器をリメイクして路上で販売したのがルーツであるとも言われています。

このような流れがあり、スプーンリングはファッションの一つとして徐々に人々に受け入れられて現在に至ります。

比較的記憶に新しいところだと、映画「トワイライト」や「パニック・ルーム」で知られるハリウッド女優のクリステン・スチュワート(Kristen Stewart)がスプーンリングを着けていたことが話題となり、改めてスプーンリングに対する注目度がまりました。

注目度が高まったことでスプーンだったものを加工するスプーンリング本来の工程ではなく、新しい金属からスプーンリングを制作したものが市場に出回るといったことも起こっています。

そのためには銀が溶かされ新しくリングなどが制作されるので、溶かされる銀の中には古い銀食器が含まれる可能性も…。

スプーンを含む銀食器は重さと銀の相場で取引をされ、銀の塊(インゴット)に姿を変え、生産者のもとへ行き様々なアクセサリーに姿を変えるのです。

なんとも本末転倒な話ですが、そういった流れも手伝ってか、ヴィンテージスプーンを加工して作った本来のスプーンリングはなかなか手に入り辛くなっているのも事実だといいます。

【 ラッキーモチーフでもあるスプーン 】

wooden-spoon_pic

◇ラッキーモチーフについてはこちら→

先ほども少し触れましたが、スプーンはラッキーモチーフの1つでもあります。

結婚を祝うのは木製のスプーンで、出産を祝うのはシルバーのスプーンが定番。

結婚式でプチギフトとして紅茶とスプーンのセットや、スプーンの形のお菓子などを貰ったことはありませんか?

これは「ウェディングスプーン」と呼ばるもの。

木製のスプーンを新居のキッチンに飾ると暖かい家庭が築けるという欧州の言い伝えと、食べるものにこまらないようにという「豊穣」の願いが込められています。

そして出産のお祝いのシルバーのスプーンは、幸運と魔除けのシンボル。

海外では「銀のスプーンをくわえて生まれた赤ちゃんは幸せになれる」という言い伝えがあり、産まれた赤ちゃんが豊かに暮らせるように、スプーンがたくさんの幸せを運んできてくれますように、という意味があるのです。

【 corbata pajaritaのリング 】

making_a_spoon_ring_pic

ご紹介してきたスプーンのリング。

いつか自身で制作したいと思い、私は現在もアンティーク、ヴィンテージのシルバースプーンを探し続けています。

そんな私は先日、制作用のパーツを購入しているお店であるパーツを見つけました。

それはスプーンの柄だけをかたどったヴィンテージのパーツ。

次回入荷は未定で、5本のみ。あれこれ考えず、咄嗟に購入していました。

翌日には実家に置きっぱなしにしていた彫金の道具を持ちに行き、作業できるスペースを整えました。

その後バーナーでなまし、芯がねで丸め、木槌でたたいて成形し、磨きました。

バーナーを使用したのは、かれこれ10年ぶりでしょうか…。

ましてや真鍮を加工するのは専門学校入学時以来かもしれません。

入学して一番最初の課題が真鍮だったので、恐らくそれ以来ぶり。

真鍮が時間とともに硬化が進み扱い辛くなることや、記憶以上に固いこと…久々に色々と思い出しました。

これは素材が真鍮で、スプーンの柄をかたどったパーツからリングを制作しているので、ご紹介してきたヴィンテージのスプーンを使用して制作されたスプーンリングとは少し立ち位置が違います。

ですが、これもヴィンテージの稀少なパーツを使用して制作をしています。

真鍮ならではの経年経過の雰囲気に育てて楽しむこともできるよう、敢えてメッキなどは施していません。

スプーンリングはデザイン上どうしても大き目サイズが多いデザインですが(スプーンの柄のサイズに左右されるため)、今回制作したこちらは小さめサイズで展開しました。

よかったらぜひ一度見てみてくださいね。→

【 まとめ 】

image-of-spoon_pic

いかがだったでしょうか。

スプーンリングの歴史を辿り、モチーフの意味などご紹介してきました。

ヴィンテージ、アンティークのスプーンリングとの出会いは一期一会です。

ただでさえ稀少ですが、サイズがぴったりだった日にはもう運命かもしれません。

私と同じように探している方は、お気に入りのスプーン、もしくはスプーンリングと一日でも早く出会えますように。

◇もしかして金属アレルギー?と思ったらこちらをどうぞ→