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真鍮のもつ抗菌性能を知っていますか?
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真鍮のように銅を60%以上含む銅合金は 抗菌性能 があると言われています。

今回はこの抗菌性能についてご紹介していきます。

【 はじめに 】

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花瓶に10円玉(銅)を入れると花が長持ちするって聞いたことありませんか?

 真鍮 の 抗菌性能 

この季節でインフルエンザのみならず、コロナウィルスが猛威を奮い、どこに行ってもアルコール消毒をする毎日を過ごす私たち。

こんな状況下で、抗菌性能、と書くと何となく眉唾もののようにも聞こえますよね。


私たちの生活の至る所に存在する真鍮や銅。

◇どんなものに使われているかはこちら→


この素材がなぜこんなにも生活の中に馴染んでいるのかは、この抗菌性能が古くからおばあちゃんの知恵的に知られていたというのも理由のひとつ。

花瓶に10円玉を入れておくと花が長持ちするとか、聞いたことがありませんか?


私は小さい時に母に教わりましたが、その時は何故長持ちするのかといったことには全く興味が湧かず、ただただ、そういうものなんだ、と思っていました。

しかしこれも10円玉によって僅かな銅イオンが発生し花瓶の水の雑菌の発生を抑えることで、水が腐るのを遅らせ、その結果花を長持ちさせるという生活の知恵。

昔の人々は科学的な裏付けは知らずとも、身をもって経験し、効果を体感していた訳ですね。

【 真鍮の成分 】

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真鍮の成分は…?

真鍮の成分は銅(60~70%)と亜鉛(40~30%)を主成分とする合金。

主成分の銅はもちろんですが、銅を60%以上含む銅合金もこの抗菌性能があるんです。


合金は使用用途にあわせて割合を変えるので、その割合によって硬さや色合いが変わってきます。同じ真鍮でも大きく分けて2種類。

・丹銅(銅80~95% + 亜鉛20~5%) 

赤みがあり銅に近い状態。

10金~18金に比較的色が近い。

耐食性も高いので建築からアクセサリーまで幅広く使用される。

・黄銅(銅60~70% + 亜鉛40~30%)

亜鉛が40%ならば六四黄銅。

亜鉛が30%ならば七三黄銅。

柔軟に形を変えることができる性質が高く、金属の雑貨や時計やカメラのパーツなどに使われる。

私たちが目にすることが多い、ポピュラーなもの。

◇特性などはこちらをどうぞ→

銅の性質に近い丹銅の方が黄銅に比べると高価で柔らかく弾力があります。

また赤味が強く、変色がしやすい、傷が付きやすいという特性を持っています。

そして一般的な真鍮の黄銅は丹銅と比べると安価で硬く弾性が弱い(もろい)、変色しにくく、傷が付きにくいです。

このあたりの特性は一長一短。使用目的に合わせて選ばれています。

【 除菌、抗菌、殺菌、滅菌、消毒…? 】

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除菌、抗菌、殺菌、滅菌、消毒…?

除菌、抗菌、殺菌、滅菌、消毒。いったいどう違うの?

withコロナとなった今、以前よりも目にすることが増えたこれらの言葉。

石鹸やウェットティッシュなど薬局の売り場でもあちこちで見かけます。

けれど、どう違うのか、知っていますか?

どれもおんなじようですが、実は違うんです。

・除菌(菌の数をへらす)

(除菌効果のない製品を使った時と比べて)生きた細菌の数をある程度減らすことを指します。

公的に定められた条件はなく、洗剤や石鹸などの業界が定めた自主基準に基づいて表記されます。

アルコールスプレーや洗剤などの日用雑貨でも「除菌」はよく使用されていますが、これは薬事法上、医薬品類ではない製品にはたとえ効果があったとしても殺菌や消毒といった言葉が使用できない為だそう。

・抗菌(一般的流通、販売されている工業製品が示す抗菌は菌の繁殖を防ぐという意味合いの表記)

一般的に流通、販売されている工業製品が示す抗菌は細菌を除去したり殺菌する効果はなく、菌が繁殖したり生息し辛い環境をつくることで菌の増殖を抑える効果のことを指します。

対象となる菌や量、範囲などの細やかな定義はありません。

経済産業省の定義では抗菌の対象は細菌のみとされ、カビや黒ずみやヌメリ等は対象外です。

キッチン用品やおもちゃ、水回りの用品の表記に多くみられる表記ですね。

※後程解説しますが、商品に記載される「抗菌」と学術的な意味合いの「抗菌」には定義に違いがあります。

・殺菌(菌を殺すがその数値や程度の定義はなし)

文字通り菌を殺すのが殺菌。

しかし細菌の一部を殺しただけでも殺菌と言えるため、すべての菌を殺すという意味ではありません。

9割の細菌が残っていても、1割の細菌を殺せていれば殺菌したということができるので、つまりは明確な定義がないのです。

また殺菌の中には2通りあり、「滅菌」と「消毒」に分類されます。

・滅菌(菌を殺す、医療用語)

似ているこれらの言葉の中で一番定義のはっきりとしている「滅菌」。

有害・無害を問わず、微生物やウィルスを含む菌を死滅・除去することを指し、菌などの残量を100万分の1にすること。

そのためには電磁波や放射線、高圧水蒸気や高熱をかけたりします。

医療器具や手術用器具などに使用されます。

この基準は日本のみならず、国際的なものです。

・消毒(菌を無毒化する)

病原性のある細菌を感染症を防げる程度まで殺す事を指します。

死滅・除去して害の無い程度にすることが、消毒の目的です。

消毒薬のように薬物を使用した方法の他、煮沸消毒や日光消毒、紫外線消毒などの方法もあります。

効果としてはダントツで滅菌が一番菌が少ない状態です。

その後は消毒に続き殺菌と除菌、最後が抗菌といったところでしょうか。

【 生活の中の真鍮 】

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言葉の持つ学術的な意味合いとガイドライン上の意味合い

抗菌という言葉が持つ2つの意味合い。

では真鍮の効力はどの程度でしょうか?

先ほど除菌、抗菌、殺菌、滅菌、消毒の違いをご紹介しました。

それだけ読んだ方だと、「銅とか真鍮って菌を増やさないだけで大したことない…」と思われるかと思います。

単純に「抗菌」という言葉だけで捉えると、「菌の繁殖を防ぐという意味」だと思ってしまうのも当然です。

しかし抗菌という言葉には実は意味合いが2つあります。

・学術用語としての抗菌(antimicrobial) 

殺菌や増殖抑制を含め微生物を制御するという考え方。

・工業製品としての抗菌

現在の経済産業省(1998年当時は通商産業省)が定義したガイドラインでは抗菌加工製品における「抗菌」は「増殖抑制」のことを指します。

(ガイドラインでは「抗菌加工製品における抗菌とは、当該製品の表面における細菌の増殖を抑制すること」と定義したため。)

そのため一般的に販売、流通している工業製品が表記する抗菌は「菌の増殖を防ぐ」という意味合いですが、これは商品を販売する為に設けられたガイドライン上の基準の話。

文献や学術論文の指す抗菌は本来「殺菌や増殖抑制」といった意味合いがあります。

この違い、物凄く重要です!

ここでお伝えするのは、工業製品として流通、販売されている商品や製品の表記(商品を販売するために制定されたガイドライン)としての意味合いではなく、学術的な意味合いの殺菌や増殖抑制を含め微生物を制御する「抗菌」の意味合いであるということを念頭に置いて読んでくださいね。

真鍮や銅、そして銀、金などの金属が持つ力は微量金属作用と呼ばれるもの。

これは僅かな量で驚くような抗菌作用を発揮するというもので、菌を殺菌したり増殖を防ぐ力の事です。

超抗菌性能なんて言ったりもします。

すでに2008年にはアメリカの環境保護庁であるEPAは、公式に銅と黄銅には「殺菌力」があると認めています。

銅イオンには細菌類を死滅させる性質があるということで、そのように表示することがアメリカでは許されています。

病原菌大腸菌O-157やレジオネラ菌、緑膿菌などの数を大幅に減らすこともできるという銅イオン。

効果も長期間にわたって維持されるということで、アメリカでは汚染のリスクの高い病院のベッドや廊下の手すりなどに銅を塗る試みも広がっています。

科学的に証明できないような微量の銅イオンに殺菌作用があるというのは1893年にスイスの植物学者フォン・ネーゲリによって発見されたと言います。

その当時では分析できないほどの僅かな銅イオンを水に混ぜただけで藻の一種であるアオミドロが死滅したのがきっかけ。

このようなごくごく僅かな金属イオンの溶け出した液体の中で微生物や藻の仲間が死滅するという働きを、当時の呼び方では「オリゴディナミー」(これは現在の微量金属作用の元になった言葉)と呼びました。

詳しいメカニズムの解明はまだですが、細菌や微生物の中に留まった銅イオンが許容量を超えることで、様々な酵素の働きをブロックし、この効果につながっているようです。

こういった金属の持つ力が、私たちの生活の中でも活かされているんですね。

先述の花瓶と花もそうですし、主婦感が出てしまって恐縮ですが、キッチン用品で三角コーナーやごみキャッチャーの網を銅製のものを使うとヌメリが軽減されたり、銅の微粒子をコーティングしたスポンジだったり…。

それに身近な硬貨もこういった金属の持つ力が使われているものの1つ。

500円玉は銅が72%、100円玉・50円玉は75%、10円玉は95%、5円玉は60~70%。

空気に晒され人の手を渡り歩くことで皮脂や水分が付き、皮脂などと反応が起こる事で特有の臭いや錆が出るようなことはあっても、硬貨自体は抗菌作用のおかげで菌が増殖することはないんです。

冬に感染拡大が懸念されるインフルエンザウイルスやノロウイルスが硬貨に付着しても多くが死滅すると言われています。

銅の割合が60%以上の合金であれば抗菌(学術的な意味合いの抗菌)性能が確認されているそうで、電車の吊り手や病院のドアノブ等で証明された実験もあり、日本では国際銅研究会や東京都立衛生研究所、京都大学などでも研究報告があるんです。

◇日本銅センターでは銅イオンの微量金属作用が細菌類を死滅させるということを科学的に実証をする為に様々な実証実験を行っているそうで、インフルエンザのウィルスに対してもとても興味深い結果が出ています。

よかったらぜひご一読くださいね。

A型インフルエンザウイルスを銅(C1100)の表面に接触させ経時的に感染数を測定した結果、1時間後に接種量の75%相当のウイルスが死滅し、6時間後は0.025%まで減少しました。

さらに最近はノロウイルス(ノロ代替ウイルスのネコカリシウイルスで実験)に対する不活化にも有効と判明しています。

A型インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス試験を実施。

銅(C1020)の表面にウイルスを接触させ、経時後の感染価を計測した結果、銅の表面のウイルスは、右記グラフの通り30分作用後に検出限界値未満まで減少しました。 銅(C1020)がインフルエンザウイルス対する感染性不活化に効果的であることが確認されました。

http://www.jcda.or.jp/feature/tabid/88/Default.aspx

【 なぜ真鍮や銅なのか 】

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他の金属では駄目なのでしょうか?

ではなぜ他の金属ではなく真鍮や銅が普及しているのでしょうか。

銅や真鍮以外の金属でも抗菌性能があるのに、なぜ銅や真鍮が普及しているのでしょうか?

確かにこれは素材の価値が銅や真鍮に比べて、銀や金の方が高価であることにも原因はあります。

しかし、実は性能を発揮する温度の差もあるんです。

銀は丁度体温程度の37度前後で効力を発揮します。

しかし25度以下では効果が劣ってしまうというのです。


それに比べて銅は温度に左右されることが少ないため、使用環境を選ばないのです。

これを聞いて私はある化粧品会社の出している制汗剤を思い出しました。

銀はAGと表記されますよね。

そうです、あのインパクトのあるCMでお馴染みの商品です。

あの商品は体に噴射し使用します。

そのため体温での使用となり、銀の持つ性能が活かされる訳ですね。

【 まとめ 】

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抗菌性能があることは、真鍮が生活に溶け込んでいる理由のひとつ

今回は 真鍮 の 抗菌性能 についてご紹介してきました。

銅や真鍮のアクセサリーとして身に着けたからと言って、病気やウィルスの予防になるわけでは決してありませんが、素材として秘めた力があることを知っていただけたらと思い今回の記事を書かせていただきました。

真鍮アクセサリーと聞くと金属アレルギーのことを大々的に書く方もいらっしゃいますが、真鍮を構成する60%は銅ですし、真鍮や銅だけで金属アレルギーが起こるわけではありません。

素材の事を正しく理解していただくためにも、必要だとも思いました。

◇人や環境、体調などによって反応が突然出る場合もありますので、金属アレルギーについてはこちらをどうぞ→

昨今様々な場面でニーズが高まってきている銅や真鍮。

ドアノブや表札などの建材としても見直され、カトラリーや小物などでも人気があります。

そうした人気を裏で支えているのは、この抗菌性能の力が一役買っていると言っても過言ではありません。

普段は意識していなくても、昔から生活に取り入れられてきた素材には理由があるんですね。

実はすごい力があったんだな、と銅や真鍮がちょっとでも見直してもらえたら嬉しいです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!