パール(真珠)は鉱物ではない有機物の宝石で、研磨しなくても産出した状態で美しいという特徴を持つ宝石です。
そしてコットンパールは元来、その真珠のイミテーションとしてコットンを圧縮して作られた素材のひとつ。
今回はこのふたつの素材について詳しくご紹介していきます。
【 様々な パール 】
パール の種類
パール ・真珠と一言で言っても、実はかなりの種類があることをご存じでしょうか?
もともと天然真珠といわれるような高価で希少なものから、南洋真珠、黒蝶真珠、マベ真珠、淡水パール、コンクパール、メロパール、養殖真珠、模造パール、 コットンパール などなど...
今あげた中で違いを細かく説明できる人はそう多くないかと思いますが、ここでは最近見かけることの多くなった コットンパール とパール(真珠)についてお話します。
◇真珠の色や種類についてはコチラをどうぞ→
【 パール と コットンパール の歴史】
パール(真珠)の歴史
人類とパール(真珠)の歴史はとても古く、真珠はよく最古の宝石と言われます。
現存するさまざまな伝承や神話、文献には必ずと言っていいほど真珠は登場するんです。
例えば古代インドの神話では、神への捧げものとして登場します。
その中で大気は神に虹を、火は流星を、大地はルビーを、海は真珠を贈るのです。
そうすると虹は後光となり、流星は灯火となり、ルビーは神の額を飾るのに使われ、真珠は神の心に飾られたとされる内容だとか。
また聖書にも真珠の話は沢山出てきます。
代表的なものと言えばこちらでしょうか。
天国は良き真珠を求める商人の如し、値高き真珠ひとつ見出さば、往きて所有物をことごとく売りてこれを買うなり
マタイによる福音書13-45,46
そして日本ではかの有名な古事記や日本書紀、万葉集に登場します。
こういった日本最古の文献に登場する際の真珠は、「しらたま」「あわびだま」「まだま」といった、私たちには馴染みの薄い名称です。
「白玉(白珠)を手に取り持して見るのすも家なる妹をまた見てももや」
万葉集巻第20-4415
こういった古い文献や神話に真珠が頻繁に登場するのには実は理由があります。
ひとつは真珠が人類にとって重要な食糧であったこと。
全ての貝に真珠が入っている訳ではありませんでしたが、食料として調達した中には真珠が入っていることも。
そうなると真珠の存在自体は人々にとって身近な物となりました。
ふたつ目の理由は真珠が研磨することなく産出した状態ですでに美しい宝石であるということ。
現在では宝石=ダイヤモンドのように考えられたりもしますが、それは研磨の技術が発達し、原石を研磨することが可能になったからこそ。
太古の昔、現在のように研磨の技術が発達していない頃は産出したそのままですでに美しい真珠は、とても価値のあるものとして人種や国境を越えて人々を魅了したのです。
そして理由の一番重要な点としては、真珠の美しさの条件に含まれる「てり」が大きな影響を持っていたといわれています。
真珠を語る上で外せないこの「てり」は、真珠独自の輝きです。
この輝きは動物に一種の「畏怖感」を与えるといわれています。
太古の昔の人々はこの畏怖感から真珠を崇め奉ったのではないかと言われているのです。
◇真珠に関してはコチラをどうぞ→
コットンパール の歴史
パール のような見た目だけどとても軽い、 パール に比べると安価である、またハンドメイドブームも追い風となって近頃はより身近となった印象があります。
コットンパール はその名の通りコットン(綿)から作られています。
もちろん、コットンから作られているので正確には真珠ではありません。
コットンパール が広く認知されるようになったのはここ十数年のお話。
アクセサリーブランドが多用したことで、ちょっとしたブームとなりました。
最近の素材と思われがちですが、実はその歴史の始まりは19世紀のフランスといわれています。
日本では元々模造真珠の生産が盛んだった大阪で、高度経済成長期に生産されていました。
しかしより安価に生産することができるプラスチックパールにおされ、一時は生産が途絶えます。
その後姿を消したと思われていたコットンパールですが、2000年になりかつての製造元からデッドストック品が見つかることで再びスポットライトがあたります。
日本は様々な商品の品質で高い評価を受けますが、コットンパール も然り、国内外から高い評価をうけています。
はじめは天然真珠の模造品として作られてた コットンパール 。
模造品であるがゆえに偽物として認知され人気がでなかった事は今は昔…。
現在では模造というマイナスイメージはすっかり払拭され、新しい素材・ブランドのひとつとして認知されています。
【 パールを見分ける? 】
真珠は高価な宝石です。
そのため気軽に楽しむための模造の真珠も沢山出回っています。
模造であるとわかっていて楽しむ分には全く問題はありませんが、もし本物の真珠の購入を検討しているならば頭の片隅に置いておいてくださいね。
真珠とコットンパールくらい見た目が違えば簡単に見分けがつきますが、全てがそうとは限りません。
模造にも安価な物から高額なものまで、またとても紛らわしい販売用の名前がついているものがあったりします。
模造の真珠に共通して言えるのは、合成真珠箔という塗料を使い見かけを天然真珠や養殖真珠に似せているという点です。
合成真珠箔というのはいわば真珠の「てり」を再現するための塗料。
基本的には顕微鏡で見れば一目瞭然なので問題はありませんが他にはこういった方法もあります。
穴を見る
穴が開いている真珠ならば穴をチェックしましょう。
模造の真珠は穴周りにバリが見られます。
真珠に穴を開けるときには細いドリルで穴を開けます。
その時に起こる摩擦熱によって、模造真珠の塗料が溶け出し、穴周りにバリができます。
真珠の珠同士をこすり合わせる
真珠はとても柔らかいためあまりお勧めできませんが、真珠同士の場合はカチッと引っかかります。
模造の珠同士の場合はつるっと滑ってしまいます。
これは主成分の違いによって引っかかる感覚が変化することから考えられたひとつの目安。
中には触った感触や噛んだ感触で判断できるという人もいるそう。
【長期間使っていただくために】
パール(真珠)のお手入れ方法
真珠は手入れが不可欠な宝石と言われています。
それは成分と構造に理由があります。
真珠の主成分は炭酸カルシウム。
炭酸カルシウムは酸性の水で溶けるという性質があるんです。
真珠は炭酸カルシウムの小さな結晶が何千と積み重なって層を作り、真珠が形成されています。
この層が表面だけでも酸によって溶けると、光の散乱という現象がおきるのです。
この現象は厄介なことに、私たちの目には「真珠が曇った」ように見えてしまうんです。
もともと私たちの汗や皮脂といったものは、酸性を帯びています。
そのため真珠表面の結晶は汗や皮脂によって溶けだしてしまうのです。
うっかり汗がついたまま保管してしまうと、汗の塩分と炭酸カルシウムの化学反応が緩やかに緩やかに進み、やがては真珠の光沢が失われてしまいます。
万が一表面が曇ってしまった場合も修復法はありますが、簡単に言えばこの修復は表面の層を一枚剥がすということ。
研磨剤入りの布で拭く事でそういったことも可能ではありますが、専門家に頼むのが一番良い方法です。
しかしそうならないためにも、やはり使用後は必ず柔らかい布(吸水性、吸油性のあるもの)で汚れをしっかりと拭きとることが重要です。
また長期間保管していく中で注意したいのが光と湿度です。
紫外線はタンパク質を変色させます。
そのため長期間紫外線にさらされると真珠は黄ばみが生じてしまうのです。
そして極端な乾燥状態、湿潤状態は真珠にとって良くない環境です。
真珠の層自体にダメージを与え、ヒビが入ってしまうこともあるので注意が必要です。
コットンパールのお手入れ方法
コットンパール の主成分はコットン(綿)。
とても多くの量のコットンを圧縮して丸め、表面を加工することで耐久性をだしています。
コットンパールを身に着けたまま入浴や海水浴、なんていうのはもちろんダメージを与えてしまいます。
他のアクセサリー同様、そういった際は必ず外すようにした方が素材にもいいですし、何より金属アレルギーの発症リスクを抑えられます。
◇金属アレルギーに関してはコチラをどうぞ→
うっかり水が跳ねて コットンパール についてしまった、といったような少量の水分であれば表面に加工が施されているため問題ないといわれています。
そのため真珠に比べるとかなりカジュアルにご使用いただけます。
とはいえ使用後はもちろん、汚れや水分がついたら必ずふき取るようにすることで長くお使いいただけると思います。
コットンパールは通常の使用であれば恐らく紫外線の影響はそんなに深刻に考えなくても良いかと思います。
しかし日の当たる場所に長期にわたって置いておくことは、やはり悪影響が考えられます。
素材自体が綿なので、紫外線による劣化、コーティングの変色等も起こり得ます。
保管の際は他のアクセサリーとはぶつからないように分けた上で、日の当たらない場所に保管してください。
◇様々な素材のお手入れ方法に関してはこちらで詳しくご案内しています→
【まとめ】
今回は コットンパール と パール の違い をご紹介してきました。
元々は真珠の代役、模造として制作されたコットンパールでしたが、現代ではアクセサリーとしては模造というよりも、ひとつの素材として認知されてきています。
◇アクセサリーとジュエリーの違いはコチラをどうぞ→
冠婚葬祭や入学式、卒業式。
人生の大切な瞬間に パール は定番品ですね。
良いものを長く使う、だから高いものを購入したり、親から引き継いだりとそれぞれにストーリーがあります。
そして大切な瞬間だからこそ、格式を気にする傾向や独特な風習もまだ残っています。
結婚式に関しては現在ではかなりカジュアルなものも増えてきました。
そのため状況によっては コットンパール のような少しカジュアルなものを使っていただけるシーンも、増えてきたように思います。
しかしまだまだ格式などを気にする方は多いです。
元来アクセサリーではなくジュエリーを使うべきシーンや格式の場では、ご自身だけの問題ではなくなることもありますので、状況などに合わせてご選択くださいね。
最後までお読みいただきありがとうございました!
◇アクセサリーと結婚式のマナーについてはこちら→