9月 誕生石 サファイア (蒼玉(青玉)せいぎょく)は、ダイヤモンドに次いで二番目に硬いコランダムという鉱物です。
今回はこのサファイアと、9月の誕生石に今後追加される可能性のあるクンツァイトについてご紹介していきます。
もくじ
【 9月誕生石 】

皆さんは9月というと何を思い浮かべますか?
私だと秋刀魚や秋茄子、サツマイモ、月見団子に、と続々と食べ物が浮かんできますが…
一般的には敬老の日や秋分の日、秋のお彼岸などでしょうか。
日本で9月は長月(ながつき)とも呼ばれます。
日が暮れるのがだんだんと早くなり、秋が深まるころ。
夏と秋の境目とされる季節。
夜が長くなるので「夜長月(よながつき)」、秋雨が降るので「長雨月(ながめつき)」と呼ばれていたのが略されて「長月」になったとか。
そんな9月の誕生石は サファイア (蒼玉(青玉)せいぎょく)。
(様々なジュエリーショップやサイトを見るとアイオライトが9月の誕生石に入っているところもありますが、このサイトでは基本的には日本ジュエリー協会の掲載する誕生石を参照させていただいています。)
(※日本で初めて誕生石を制定した全国宝石卸商協同組合は、およそ60年ぶりにその誕生石を制定しなおすようです。その新しい誕生石ではアイオライトは今後、3月の誕生石に正式に仲間入りするようです。)
9月生まれの方は、誕生石が1種類しかないからと言ってがっかりしないでくださいね。
サファイアは何といっても色の種類が豊富。
それに高級な宝石のイメージの強いサファイアですが、昨今様々なニーズのおかげで販売されるクオリティも価格も、選択肢が大きく広がった石の1つでもあります。
そして先ほども少し触れましたが、 全国宝石卸商協同組合の選定する誕生石 では今後9月の誕生石に新たにクンツァイトが仲間入りしそうです。
クンツァイトは紫がかった淡いピンクが特徴の女性らしい石。
以前より女性には人気の高い石でしたが、誕生石の仲間入りを正式に果たすことでますます人気が上がってきそうですね!
それではご紹介していきたいと思います。
【 9月 誕生石 サファイア 】

ラテン語で「青」を意味するサファイア。
日本でもかつて蒼玉(青玉)(せいぎょく)とよばれていたことを見ると、サファイヤを目にした人々にとって青色がとても印象的であったことが伺えます。
日本では結婚23周年を青玉婚式(せいぎょくこんしき)と呼び、感謝の気持ちを込めてパートナーへ贈る石がサファイアとされています。
サファイアのその特別な色は、トパーズからタンザナイトに至るまで、他の青い宝石の評価基準となっています。
■モース硬度
モース硬度: 9
コランダム(鋼玉)の変種でダイヤモンドに次ぐ硬度があります。
■color
青の印象がとても強いサファイアは「サファイアブルー」という言葉もあるほど。
サファイアという表記であれば通常はブルーサファイア。
けれどサファイアにはとてもたくさんのカラーバリエーションがあります。
サファイアの鉱物名はコランダム。
7月の誕生石「ルビー」の際にも触れましたが、ルビーとサファイアは鉱物的には同じ鉱物です。
このコランダムという鉱物はとてもバリエーションに富んでいて、赤はルビー、青はサファイア、それ以外の色を総称してファンシーカラーサファイアと呼びます。
ファンシーカラーサファイアはピンクやオレンジ、黄色、緑、紫などなど。
ファンシーカラーの中で特に人気が高いのはかわいらしいピンクサファイアと、ピンクがかったオレンジで「King of Sapphire(サファイアの王)」とも呼ばれる「パパラチア」。

またサファイアの中にはアステリズムという効果がみられるものもあります。
アステリズム効果は多数の針状のインクルージョン(主にルチル)が含まれることで6放射の星形の光が見えるもの。
これはルビーにも見られる効果です。
そしてアレキサンドライトのように光源によって色が変わるものも稀に見られます。
アレキサンドライトほどの変化ではないものの、カラーチェンジサファイアと呼ばれ希少です。
■産地

サファイアは産地によって色の濃淡に差がでます。
また当然のことですが、その色の良し悪しで価値も変化します。
主な産地はタイやミャンマー、カシミール地方、スリランカ、マダガスカル、オーストラリア、カンボジア、中国などなど。
・カシミール産のブルーサファイア → コーンフラワーブルーと呼ばれる
・ミャンマー産の深いブルーサファイア → ロイヤルブルーサファイアと呼ばれる
※日本の鑑別ではミャンマー産と確定したうえで一定の色でないとロイヤルブルーサファイアの記載をすることができません。
ロイヤルブルーサファイアという色が元々はイギリスの王室がミャンマー産サファイヤに与えた色のため、日本の鑑別業界ではそれを遵守しています。
しかし海外の鑑別所では産地は不問で、一定以上の深い青であればロイヤルブルーサファイアと記載されます。
そのため海外の鑑別書にロイヤルブルーサファイアと記載されている場合は、産地がミャンマー以外のこともあります。
ミャンマー産のものを探したい場合は要注意です。
■歴史
・古代ギリシャ、中世ヨーロッパではサファイアが目に良いと信じられ、毒物に対する解毒剤として使用されていました。
また貞操を守る、敵と和解する、神託を明らかにするといった力があるとされ、様々な時代、様々な場所の人々に信じられてきました。
・中世では聖職者が天国の象徴としてサファイアを身に着けることで、その宝石が天の恵みを引き寄せると考えていました。
キリスト教では司教の叙任の印としてサファイアをあしらった指輪を人差し指にはめる習わしが残っているほど。
天の力を宿したい聖職者たちにとってサファイアは聖職者の指輪にふさわしいと考え、こぞってサファイアの指輪を身に着けたとも言われています。

・「東方見聞録」で知られているマルコ・ポーロ。
12世紀末にアジアの果てまで探検したこのマルコ・ポーロは、モンゴル宮廷への献上の品としてサファイアを用意したという記述が残っています。
当時の皇帝はサファイアの美しい輝きに魅了され、マルコ・ポーロはとても丁寧にもてなされたといいます。
・比較的記憶に新しいものだと、1981年イギリス。
チャールズ皇太子が後のダイアナ元妃に贈ったのがブルーサファイアの婚約指輪でした。
■由来や言い伝え

・伝説によるとギリシア神話ではサファイアを最初に身につけたのは、人間の為に天から火を盗んだプロメテウスとされています。
・古代旧約聖書に書かれているサファイアは、実はラピスラズリのことを指しています。
と言うのも、古代ではサファイア = 全ての青い石を指す言葉だったとも言われています。
サファイアは特定の石の名前では無かったなんて、何だか不思議な感じもします。
そんなサファイアの語源は、ラピスラズリに関するギリシャ語の「sappheiros(サピロス)」に由来していると言われています。
もしくはラテン語で青を意味する「sapphirus(サッピルス)」。
どちらも青い石を指していることは間違いなさそうですね。
・よこしまな考えや浮気心のある人が身に着けると石の色が濁ると言われていました。
男性が女性に贈ることで浮気していないかどうか試していた、という一風変わった、皮肉めいたいわれもあります。

・サムシング・フォーと言われるヨーロッパの結婚式にまつわるジンクス。
花嫁が身に着けると幸せになれると言われる「サムシング・フォー」。
その中の1つが花嫁が青いものを身に着けるというもの。
婚約指輪にサファイアを選ぶ方が多いのもこのジンクスの影響があると言われていますし、指輪の内側にサファイアを埋め込む方もいるようです。
・古代ペルシア人は地球がサファイアによって支えられていると考えていました。
そのため空の青はサファイアの青だと言われ、天候によってサファイアの光り方が変わると信じられてきました。
・インドではサファイアを浸した水はサソリやヘビに噛まれた傷に効くとされていました。

・ミャンマー(ビルマ)に伝わる伝説は、黄金の髪とサファイアブルーの瞳をもった女神にまつわるもの。
寺院の高僧の一人が愛猫と一緒に毎日この女神に祈りを捧げていると、ある日寺院はならず者の集団に襲われます。
もちろん高僧の一人も危険な目にあうのですが、その危機を救ったのはなんと高僧の愛猫。
その愛猫は勇気を称えられ、黄金の女神から女神と同じサファイア色の目を与えられたといいます。
その後もずっと同じ種類の猫によって守られたという寺院。
この寺院は今なお存在し、美しい青い目のシャム猫が寺院を守っているそうです。
・人工のサファイアは耐熱温度が2000度といわれ、とても硬いです。
その特性から溶鉱炉の窓や人工衛星、半導体の基板にも使われていますし、身近なものだとボールペンの先やレコードの針、時計のカバーレンズなどにも。
無色透明のものだとiPhoneのカメラレンズやTouch IDの保護にも使用されているそうです。
■誕生石「サファイア」のお手入れ & クリーニング

サファイア(コランダム)の硬度は9。
モース硬度は10段階ですが、ルビーはその中でも2番目、ダイヤモンドの次に硬度のある鉱物です。
優れた靭性を持っており劈開(衝撃によって割れる性質のこと)がありません。
クリーニング方法としては温かい石鹸水でのお手入れが安全です。
超音波洗浄機やスチームクリーナーは未処理のサファイア、加熱処理(石の色を強めたり鮮やかにするために熱を加える手法)のサファイア、格子拡散処理(拡散処理は、色の要因となる元素を浸透させることにより色を変化させる手法)のサファイアに基本的に問題なく使えます。
フラクチャー充填、キャビティー充填(見た目のクラリティや外観、安定性を改良するため、ガラス、樹脂、ワックス、オイルなどで充填すること。充填素材は、固形物(ガラス)から液体(油類)まで様々)、が施されたサファイアは湿った布で拭くだけにしてください。
基本的には熱や薬品にも強いです。
しかしフラクチャー充填などの処理がされている場合、浸透の度合いによってはレモン汁のような比較的低刺激の物質でも変質を引き起こす可能性もあるので注意が必要です。
【 9月 誕生石 クンツァイト 】

全国宝石卸商協同組合が選定する9月の誕生石に今後名前を連ねることになりそうなクンツァイト(ゆう輝石・リシア輝石(スポデューメン))。
スポデューメンはピンク色のものはクンツァイト、緑色の石はヒデナイト、黄色の石はトリフェーンという名前で呼ばれます。
■モース硬度
モース硬度:6.5~7
劈開(衝撃によって割れる性質のこと)が完全なため結晶の層に沿って割れやすい性質を持ちます。
■color
スポデューメンはピンク色のものはクンツァイト、緑色の石はヒデナイト、黄色の石はトリフェーンという名前で呼ばれます。
またこれ以外にも無色、灰色、青緑色のものなどがあります。
クンツァイトのライラックピンクの色はマンガンに、また緑色系のヒデナイトの発色はクロムに起因します。
クンツァイトの色は時間の経過とともに色が薄くなります。
そのため色を濃くするための照射処理が行われることがあります。
多色性が強いので角度を変えて見ることで、無色の部分と地の色の二色の色合いが観察できるという特徴も。
■産地

アフガニスタンやナイジェリアが主です。
アフガニスタンの方が透明感がありますが、ナイジェリア産のミルキーがかった発色もまた可愛らしく人気です。
またナイジェリア産はキャッツアイ効果が見られるものも。
人気が上がるにつれて価格が高騰しているクンツァイト。
ナイジェリア産の方が比較的手に入れやすい価格帯かもしれません。
スポデューメンはマダガスカル、ミャンマー、アメリカ、ロシア、カナダ、メキシコ、スウェーデンなどでも産出します。
■歴史
・1877年 スポデューメンがブラジルで発見されました。(宝石品質ではないスポデューメンは200年以上前から鉱物学者には知られていました。)
・1879年 クンツァイトとヒデナイトが同一鉱物であるとわかりました。
■由来や言い伝え

・スポデューメンの名前は「燃えて灰(spod)になる」という意味のギリシャ語に由来しています。
・クンツァイトはアメリカの有名な宝石学者クンツ博士(Dr.G.F.Kunz)の名前に因んでKunziteと命名されました。
・ヒデナイトは1979年にノースカロライナ州で初めて発見された際の鉱山の監督、ヒデンの名前に由来しています。(ヒデンは文献によってはA.E.HiddenもしくはW.E.Hiddenと表記されています。)
■クンツァイトのお手入れ & クリーニング
クンツァイトは二方向に完全な劈開(衝撃によって割れる性質のこと)をもっているため、研磨や石留めにも注意が必要。
靭性(※靭性とは衝撃に対してどのくらい強く、割れにくいかを示す指標。)もあまり高くないので衝撃によって割れてしまうこともあります。
圧力がかかったり、激しい温度変化でも破損することも。
こういった破損を避ける意味で、ジュエリー加工する際には主にペンダントやブローチのような摩耗しにくいアイテムに加工されることが多いです。
熱や強い光、紫外線に長時間さらされることで退色するので保管の際には光に当たらない工夫をしてください。
クリーニングには温かい石鹸水で洗浄するのが最適で、超音波洗浄器やスチームクリーナーは避けてください。
【 番外編・ アイオライト 】

9月の誕生石に名前を連ねることもあるアイオライト(菫青石(きんせいせき))。
日本ジュエリー協会の掲載する誕生石には記載がないですが、9月の誕生石と記載するお店やサイトもありますのでアイオライトについてもご紹介していきます。
(※全国宝石卸商協同組合の選定する誕生石では、アイオライトは今後、3月の誕生石に正式に仲間入りするようです。)
美しいすみれ色が特徴のアイオライト。
ライトブルーのサファイアと比べられることもあり、「ウォーターサファイア」と呼ばれることもあります。
■モース硬度
モース硬度: 7 ~ 7.5
■color
アイオライトは見る角度によって違う色に見える多色性があり、きちんとしたカットを施されたものはすみれ色のような青、明るい青、黄色味がかったグレーの3色がみられます。
もともと天然由来の傷やクラックが見られる石ですが、それらを見えにくくするために樹脂加工が施される場合があります。
特殊なものだとレピドクロサイトのインクルージョンを含むブラッドショットアイオライトと呼ばれるものや、キャッツアイ効果がみられるアイオライトキャッツアイと呼ばれるものもあります。
■産地
主な産地はインドやスリランカ、ブラジル。
■歴史

・古いスカンジナビアの物語によると、古代スカンジナビアの船乗りたちがアイオライトを魔法の太陽の石と呼び、世界で最初の偏光フィルターとして使ったとあります。
これはアイオライトのレンズを通すと雲の多い日でも太陽の位置を見ることができ、船を安全に航行させることができたため。
またアイオライトは「バイキングの石」「バイキングのコンパス」とも呼ばれることがあります。
■由来や言い伝え

・アイオライト(iolite)はギリシャ語の「ion(すみれ色)」と「lithos(石)」という2つの単語から作られた造語だといわれています。
この名前はブルーサファイアとアイオライトを並べた時にアイオライトが沈んだ青色に見えたことから、すみれがかった色と例えられたことに由来しているといいます。
・アイオライトという呼び名は流通名。
実際の鉱物名はコーディエライトといいます。
この鉱物の研究者でもあるフランスの地質学者のP.L.A.Coldier(コルディエ)の名前に因んで名づけられました。
・ヨーロッパには娘が大人になったときに両親がアイオライトを送る習慣がありました。
これには娘が誰かを心から愛する年ごろになったときに本物の愛を見つけられるように、という願いが込められています。
そのため「結婚へ導く石」とも言われています。
■アイオライトのお手入れ & クリーニング
アイオライトは高温や急激な温度変化によって破損する可能性があります。
また一方向に完全な劈開(※劈開とは結晶や岩石の割れ方がある特定方向へ割れやすいという性質のこと)をもっています。
ダイヤモンドやサファイアと比べると耐久性が低く、打撃に弱いのでスポーツなどの際の着用は避けたほうが無難です。
とはいえ神経質になりすぎなくても、日常生活で使用する範囲であれば問題なく使用できます。
クリーニングには温かい石鹸水で洗浄するのが最適で、超音波洗浄器やスチームクリーナーは避けてください。
【 まとめ 】

9月の誕生石 、サファイアとクンツァイト、そして番外編としてアイオライトについてご紹介してきました。
サファイアと一言で言ってもいろんな選択肢があります。
青は苦手だなと感じた9月生まれの方も、青以外にも選択肢があると知るとサファイアのイメージが変わったのではないでしょうか。
それに今後はクンツァイトの仲間入りで、9月の誕生石はとても選択肢が広がりますね。
アイオライトも1つの石で3色が楽しめる石。
他にはない色合いのブルーもとても魅力的です。
今後は3月の誕生石としてより認知度が上がっていくのではないでしょうか。
たくさんの選択肢から選ぶのは、うれしい悩みでもあります。
ぜひ色々なアクセサリーやジュエリーをたくさん見て、たくさん悩んで、お気に入りの1つを見つけてくださいね。
最後までお読みいただきありがとうございました!