金属疲労 とは金属の同じ場所に繰り返し負荷がかかることで、金属に割れが発生し進行することで折れたり壊れたりしてしまうことを言います。
もちろんこれは金属で作られた アクセサリー にも起こる現象です。
今回はこの 金属疲労 と アクセサリー について詳しくご紹介していきます。
【 はじめに 】

知ってほしい、 金属疲労 と アクセサリー の話。
金属疲労という言葉を聞いたことがありますか?
「疲労」というのは私たちが様々なストレスにさらされ、疲れを感じた状態の事。
実は金属にもこういった「疲労」の状態が起こることがあるんです。
大きなものであれば車や飛行機、電車や橋、そしてジェットコースターなどで、金属疲労による事故が過去に起こっています。
これらは長期間に渡って金属が繰り返し負荷を受けていくうちに、金属に亀裂が生じたり、強度が落ちてしまったり…。
最終的には破損し事故が起こってしまったという事例です。
アクセサリーやジュエリーの金属疲労の場合、ここまで大きな事故に繋がることは少ないかもしれません。
しかしアクセサリーやジュエリーは身に着けるもの。
身に着ける際に金属疲労による破損が起これば、怪我をする原因にもなり得ます。
金属を扱うお仕事の方や、ジュエリー・アクセサリー作家の方ならば恐らくどういった際に金属疲労が起こるか、身をもって体感してらっしゃるかと思います。
しかし、身に着ける側の方にこそ知っていてほしい事でもあるんです。
身に着ける側の方には金属疲労がどんなものなのか、きっと理解し辛いかと思います。
ですが難しく考えずに、ご自身が怪我をしたりしないためにも、ぜひ一度読んでみてもらえたら幸いです。
【 これが金属の疲労 】
映像は真鍮のワイヤーに負荷をかけ続ける様子です。
太さは0.5mmの真鍮素材ですが、折ったり戻したりを繰り返すことで一定の場所に負荷をかけています。
するとどうでしょう。
何度か負荷をかけていると、金属の「ハリ」のような感覚が一瞬軽くなったと感じた次の瞬間、ワイヤーがポキッと折れてしまうのです。
これが金属疲労です。
恐らくワイヤーワークをされている作家さんなら、こういった経験をしてらっしゃるのではないかと思います。
ワイヤーは素材や硬さの種類は様々ですが、曲げて使用することを前提とした素材ですので比較的曲げやすい素材です。
ですが納得する形に成形するまでに、慣れない状態であれば何度となくやり直しをすることもあるんです。
そんな際には映像のように、ポキっと簡単に折れてしまうことも…。
こんな時たいてい力はそんなに入っていません。
ですが金属疲労が起こった金属はこんな風に、いとも簡単に折れてしまうんです。
この性質を理解していれば、こんな風にならないようにワイヤーを使うこともできます。
作り手側の方であれば恐らく製品となったアクセサリーやジュエリーに対しても、自然と金属疲労を避けるように扱えると思います。
しかし金属疲労を知らなければ、製品となったアクセサリーやジュエリーを身に着ける際に金属疲労を起こしてしまう可能性もゼロではないんです。
【 金属疲労はなぜ起こる? 】

金属疲労は材料の組織・強度・硬さによって起こる速度が変わります。
一般的に組織が均一で硬い材料の方が進行は遅いといわれますが、金属材料の化学組成だけでなく、材料組織の強度や伸びなどの特性も影響します。
何かに加工される金属はイメージしやすいもので言うと、例えば焼入れという熱処理を施すことで硬くすることもあります。
強度や硬さに関係する事として、4種類の金属の強化機構というものがあります。
・固溶強化…材料に別の合金を添加し組織そのものを強化すること。
・折出強化…硬い折出物(液体や溶液の溶質が結晶化したもの)を微細分散させて材料を強化すること。
・転位強化…材料に鍛造や圧延などの加工を行うことで強化すること。
・結晶粒微細化強化…材料の結晶粒を細かくすることで材料を強化すること。
これらの方法で材料自体を強化しても、結晶粒微細化強化以外は硬くしすぎると伸びがなくなり、逆に脆くなってしまうことも…。
またこういった強化が施された金属でも、長期期間に渡って使用するうちに材料に負荷がかかったり、亀裂が生じることで強度が落ち、やがては破損が起こってしまうのです。
【 金属疲労が起こりにくい素材は? 】

ジュエリーやアクセサリーに使われる素材で金属疲労が起こりにくい素材はあるのでしょうか。
基本的にジュエリーと呼ばれるには美しさ・稀少性・耐久性という3つの条件を満たしていなければなりません。
また日本ジュエリー協会では素材に貴金属を使い、天然宝石を用いた装飾品のことをジュエリーであると定義しています。
◇ジュエリーとアクセサリーの違いについて詳しく知りたい方はコチラをどうぞ→
貴金属とは一般に、金(Au)、銀(Ag)と、プラチナの仲間である白金族の6種類、
プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)の合計8種類を貴金属と称しています。
希少であり、加工性がよく、化学的に安定していることなどが貴金属といわれる所以です。
貴金属のうち、金、銀、プラチナは、主材料としてジュエリーに用います。パラジウム、イリジウム、ルテニウムは割り金(わりがね)としてジュエリーの素材に用います。
オスミウムは、現在ではジュエリーにもめっきにも用いません。
一般社団法人日本ジュエリー協会ホームページより引用
一般的にジュエリーに使用される貴金属のくくりのプラチナやゴールド、シルバーは他の金属と比べたときに、金属疲労は起こりにくいといえます。
特にプラチナやゴールドは酸化や硫化といった化学変化を起こしにくいため、年月を経ても色が変わりにくいです。
これは素材自体が化学的に安定しているということ。

しかしこういった比較的安定しているといわれるこういった素材でも、落とし穴はあります。
それは表面からは見る事のできない「ス」とよばれる存在。
鋳造という方法で作られたジュエリーは「ス」と呼ばれる微小な孔や空洞が生じている事があります。
この「ス」がある地金は、「ス」がない地金に比べて強度が落ちてしまいます。
イメージとしては地金に小さな孔があいていてスポンジのようになっている状態とでも言いましょうか…。
こうったものが金属内部に隠れていると、場合によっては金属疲労のような折れ方をしてしまうことがあるんです。
◇鋳造について詳しく知りたい方はコチラをどうぞ→
金属疲労が起こりにくい素材はあるかどうかについて書いてきましたが、どの金属に関しても割金などにも影響をうけますし、一概にこの金属が強い!とか金属疲労が起こらない!とは言えないのが現実です。
そして実際のところ金属疲労を起こさないためには、金属の種類よりも使い方が重要なんです。
◇割金についてはコチラで詳しくご紹介しています→
【 金属疲労を起こしにくい使い方って? 】

金属の種類よりも重要な、ジュエリーやアクセサリーの「使い方」。
簡単に言ってしまえば無理な力を加えない事です。
金属疲労は起こりにくいアイテムと起こりやすいアイテムがあります。
起こりにくいアイテムは、ネックレスやブレスレット、ブローチ、イヤリングやピアスなど。
逆に起こりやすいアイテムはリングやバングル、昨今流行りのイヤーカフが代表的でしょうか。
リングやバングル、イヤーカフの共通点と言えば…。
そうです!ご自身でフィットさせる事のあるアクセサリーなんです。
①指輪

リングはロウ付けされているものであれば、想定外の負荷がかかり歪んでしまうケースを除けば問題はまずありません。
しかしフリーサイズのリングはご自身の指に合わせて曲げ伸ばしをしますよね。
人によっては今日は薬指につけて、明日は人差し指、といったように日によって違う指に着けることもあるかもしれません。
フリーのサイズリングの調節は徐々に力を加えてフィットさせることが大事です。
力を入れすぎてしまい狭めすぎたり、逆に広げすぎたりを繰り返してしまうと、金属疲労のリスクです。
ましてや毎日違う指に着けようと欲張って、何度も何度も繰り返しサイズを変えてしまうのも良くありません。
フリーサイズというのは着ける指を変えて楽しめる、ということではないんです。
ご自身の指にフィットさせることができる、ということなので、一度ご自身の指にフィットさせたら何度も何度も曲げ伸ばしをせずに一定のサイズでご使用いただくと金属疲労のリスクが下がります。
②バングル

以前にブログでもご紹介したことがありますが、バングルの着脱は慣れるまで難しかったりします。
正しいつけ方を知らずに、曲げ伸ばしをして着脱するうちに金属疲労で破損してしまうことの多いアイテムでもあります。
◇バングルの正しいつけ方を知りたい方はコチラをどうぞ→
もしバングルもサイズを微調整したい場合は慎重に、ゆっくりと力を加えて微調整をしてください。
何度も曲げ伸ばしをすることはNGです!
③イヤーカフ

昨今流行りのイヤーカフ。
イヤーカフは大きく分けて2種類。
耳を挟むタイプのものと、耳に引っ掛けるタイプのもの。
耳に引っ掛けるタイプは多少サイズを調整して耳にフィットさせることもあるかもしれませんが、基本的にはそんなに金属疲労のリスクは考えられません。
問題は耳に挟む輪っかタイプ。
輪っかのような形状のタイプは、使用時に曲げ伸ばしを繰り返すことで金属疲労による破損の可能性が考えられます。
こういったタイプの中でも特に、ワイヤーを使って作られた輪っかタイプのイヤーカフの場合は、簡単に曲げ伸ばしができてしまうため着脱時に特に注意が必要です。
後日イヤーカフのつけ方も詳しくご紹介しようと考えていますが、簡単にご案内するとこちらの4ステップ。
①耳たぶを軽く引っ張り、耳のふちの薄い部分(耳たぶと軟骨の境目辺り)からイヤーカフを差し込む
②着けたい位置までスライドさせる
③イヤーカフをフィットさせる(ご自身が怪我をしないよう、またイヤーカフに金属疲労が起こらないよう、あくまでゆっくりと力を加えます。)
④触ってみて動いてしまうようであれば微調整する
この時にバングルと同じように大きく輪っかを広げてからフィットさせるようなつけ方を繰り返していると、すぐに金属は疲労を起こしてしまうので注意が必要です。
【 まとめ 】

知ってほしい、 金属疲労 と アクセサリー の話ということでご紹介してきました。
暑い季節が近づいてくると手首の出るファッションだったり、髪をまとめて耳を見せる機会も増えてきます。
そうなるとバングルやイヤーカフを使う頻度も自然と増えてきますよね。
いざ使おうと思ったら壊れてしまった、なんて悲しいことにならないように、もう一度使い方を見直してもらえたらと思ってご紹介してきました。
硬いというイメージの金属も、何度も負荷がかかったり、強い力が加わると案外簡単に折れてしまうことがあるんです。
ご自身が怪我をすることなく安全に使用していただく為にも、なんとなく、ではなく正しい扱い方を身に着けて頂けたら幸いです。
最初は正しい扱い方が何となくめんどくさいな、と感じることもあるかもしれませんが、慣れてしまえばとっても簡単です。
あれこれ考えるよりも先に、ぜひ試してみて頂けたら嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました!
◇corbata pajaritaのアクセサリーはコチラをどうぞ→