4月 誕生石 水晶 ( クリスタル )は地殻から産出する最も一般的な鉱物のひとつ。
石英の中でも無色透明のものを水晶と呼びます。
もくじ
【 はじめに 】
4月といえば…新生活が始まって、とにかく慌ただしい、そんな毎日を送ってらっしゃる頃でしょうか。
新しい環境に戸惑ってらっしゃる方も多いかもしれません。
先日のブログではスタンダードな4月の誕生石であるダイヤモンドについてご紹介をしました。
その時に日本ジュエリー協会の定める4月の誕生石には入っていないということでご紹介をしなかった石。
ダイヤモンドと同じように基本的には無色透明のクリスタル(水晶)。
以前はどうしてもダイヤモンドの代用品のイメージが強かったこちらの石も、魅力が浸透し、昨今人気がとても上がってきています。
そんなクリスタルの魅力を番外編ということで今回ぜひご紹介していきたいと思います。
◇日本ジュエリー協会の掲載する12か月の誕生石についてはこちらをどうぞ→
【 4月 誕生石 水晶 ( クリスタル )( クォーツ )( 石英 ) 】
水晶 ( クリスタル )( クォーツ )( 石英 )( Rock Crystal )( Quartz )は日本では古くから七宝のひとつとして重宝されてきました。
世界的に見ても様々な場所で産出することも手伝ってか、古来より装飾品や宗教的な道具などに使用されてきています。
また現代では合成水晶は生活に欠かせない素材のひとつであり、コンピューターやテレビ計測機器や時計など、私たちの生活の中に浸透しているんです。
■モース硬度
モース硬度:7
結晶は通常先端が錐面で囲まれ長手方向に直角に走る条線を示す六角柱状。
双晶を成すことが多く、劈開(特定方向への衝撃に弱く傷つきやすい性質)は不明瞭で、断口は貝殻状。
■color
・石英のうちで無色透明のものを水晶と呼びます。
色は基本的には無色透明ですが白色、乳白色のものもあります。
時には色のついた水晶(黄水晶や紫水晶、茶水晶など)と区別するために「白水晶」という表現をすることもあります。
・名称に使用する場合、透明石には水晶、半透明石には石英の名称を適用します。
・インクルージョンを含むもの
水晶の結晶中に他の鉱物を含むものがあります。
ルチルクォーツ(ルチルを含む)、トルマリンクォーツ(トルマリンを含む)、の場合針状を示すことが多いので広い意味で「針入り水晶」とも呼ばれます。
また緑色の緑泥石や角閃石が内包されるような場合、草状に見えることから「草入り水晶」とよばれることもありますが、現在では庭に例えられるガーデンクォーツといった呼ばれ方の方が一般的でしょうか。
さらに酸化マンガンの内包物を含む場合は樹枝状のインクルージョンを示すことがあり、デンドリティック・クォーツと呼ばれます。
微小なクラックがあるためにイリデッセンス(光の干渉によって、鉱物が虹色に輝く光学現象のこと。主に薄層による光の干渉でイリデッセンスが見られるものと、オパールのように遊色効果で色彩が変化するものとある。)を示して虹色が見えるような場合はアイリス・クォーツ、虹水晶などと呼ばれます。
■産地
過去には日本の山梨でも産出した水晶。
現在の主要な産地はブラジルやマダガスカル。
他にもアメリカやオーストラリア、カナダ、スイス、フランス、ロシア、中国です。
■歴史
・テオフラストス(紀元前371年~紀元前287年)
アリストテレスの弟子と言われる人物の記した鉱物辞典。
この方が記したといわれる岩石や鉱物についての書「De lapidibus」(石について)。
この書物に水晶(クリスタル)が登場します。
このころ透明で先の尖った六角柱のものをクリスタルと呼んでいました。
その後クリスタルという言葉は水晶以外にも使われるようになります。
透明で美しい形状の鉱物に対しても使われるようになると、結晶という概念が誕生したのです。
現代ではクリスタルという言葉には水晶以外に、結晶という意味であったり、クリスタルガラスといった名称にも使用されます。
そのため分ける意味でも、英語圏で水晶はクリスタルと呼ぶよりもロック・クリスタルと表現をします。
これは水晶が岩の中で見つかることに因んだ呼び名だとか。
またドイツでは山で見つかることから、Berg・Crystal(山のクリスタル)と呼ばれます。
・推定1~2世紀頃 中国最古の薬物書 「神農本草経」
この本の中に「白石英」に関するページがあり、「指くらいの太さで、六角柱の面を持ち、白く透き通っている」と紹介されているそう。
この時代に水晶という名前は存在せず、水晶という名前が最初に登場する書籍は明時代(1368年~1644年)の「本草綱目」という書籍だそうです。
・16世紀
「クォーツ」という言葉は16世紀に生まれたとされています。
元々、金属鉱脈を採掘する際に邪魔になった石英の鉱脈を指すドイツ語なんだそう。
この石英の鉱脈は金属鉱脈の採掘の障害となるので、鉱山夫にとっては厄介な存在でしかなかったようです。
この言葉は18世紀には一般化します。
現在塊上の石英をクォーツと呼ぶことがあります。
しかし日本語の石英とは異なる使われ方をすることもあるので要注意です。
例えば茶水晶。
日本では煙水晶などとも呼ばれることのある茶色の水晶です。
英語でこの石はスモーキー・クォーツと呼ばれます。
日本では色+水晶で呼ぶことが一般的ですが、英語では石英(クォーツ)として扱われます。
英語でクリスタルと呼ばれるのは透明かつ、先の尖った六角柱の形状のものです。
・1905年
イタリアの鉱物学者ジョージ・スぺチア(George Spezia)氏によって人工水晶育成(水熱合成法)に成功しました。
◇人工水晶育成についてはコチラをどうぞ→
・1930年頃
ドイツ、アメリカ、イギリス、ロシアなどでも盛んに人工水晶合成の研究が進められます。
こんなにも各国が盛んに研究を進めたのは、それぞれに思惑があったから。
当時通信機器に使用された水晶発振子はブラジル産天然水晶に依存していました。
しかし戦争や通信の発達により材料が不足するのではないかと懸念されていたのです。
その後合成水晶は時計などに使われるようになります。
・1953年
日本初の人工水晶合成の研究が山梨大学で開始されました。
この研究が現在世界一位の水晶振動子産業の基礎を築いたといわれています。
時計や電子機器に使われる水晶振動子。
水晶振動子を構成する重要な部品が合成水晶です。
元は天然水晶が使われていましたが、電子部品に使うためには純度の高い物が必要でした。
天然の水晶はヒビや気泡、他の物質が混じることがほとんど…。
水晶の代替品として作られた練り水晶とは違い、手間をかけて工業用の人工水晶を作り出すのには、こういった理由が存在したんですね。
~日本の水晶~
・縄文時代(紀元前14000年頃 – 紀元前10世紀)
日本では今から7000年ほど前の矢じりに加工された水晶が釈迦堂遺跡で見つかっています。
・古墳時代(250年~538年)
約1600年前の水晶でつくられた勾玉が銚子塚古墳で見つかっています。
・江戸時代(1603年 ~ 1868年)
本格的な水晶の加工が行われるようになったのは江戸時代後半。
水晶加工の技術は玉屋弥助という人物が伝えたといわれています。
この人物は1804~1843年に京都と山梨を行き来して、昇仙峡にある金桜神社の神官に技術を伝承したのだとか。
1869年には水晶の鉱山の開発の自由化により、人々は競って採掘をしました。
そして1876年になると甲府城内に勧工場ができ、多くの技術者も育てられました。
・1900年以降
乱掘により水晶の採掘が制限されます。
・1910年頃
ブラジル産の水晶の原石の輸入が始まります。
(1937年の日中戦争により終戦まで輸入も生産も止まります。)
・1945年
第二次世界大戦 甲府空襲により、水晶の加工設備や材料等が焼け落ちます。
その後水晶加工業者が立ち直るきっかけとなったのは、アメリカが日本産の指輪などを買い求めるようになったためだとか。
・現在
低価格の輸入品(韓国や台湾で加工されたもの)に押され、国内の水晶加工の数は減り、鉱山も様々な理由で閉鎖しています。
■由来や言い伝え
・水晶(quartz)の名前はギリシャ語の透明な氷を意味する「krustallos」に由来します。
これは水晶は神が想像した氷であると考えられていたことから。
古代の人々がオリンポス山の奥深くの洞窟で発見された透き通った石英を、氷の精であると考えたとも言われています。
・清流の源で原石がよく発見されたことから古くは「水精」ともよばれました。
・古来より装飾品としてだけではなく、宗教上の奉納品、魔除けとして重宝されてきました。
・山梨で採掘された日本式双晶(Japanese law twin)
傾斜した軸が互いに直角に近い角度(84°33′)で交わる双晶で、山梨でかつて産出したもの。
その形から夫婦水晶、矢羽根形水晶などと言われ世界的にも珍しい鉱物学的標本として珍重されています。
◇日本式双晶について詳しく知りたい方はコチラをどうぞ→
・ハーキマーダイヤモンド?ダイヤモンドクォーツ?
ハーキマーダイヤモンドは、ニューヨークのハーキマー地区で採掘された特徴のある形状の水晶を言います。
ハーキマーダイヤモンドというのは正式名称ではなく、販売時に使用される名前、コマーシャルネームです。
そのため鉱物としてはダイヤモンドではなく水晶です。
こういった販売時に正式な名称とは違った呼び名、コマーシャルネームで販売されることは、宝石業界では割とよくあります。
例えば12月の誕生石のタンザナイトもそのひとつ。
タンザナイトは正式名称があまり縁起が良くないことなどから、この名前で販売されることとなりました。
◇タンザナイトの名称についてはこちらをどうぞ→
ハーキマーダイヤモンドは他の水晶と比べ、カットも研磨もされない無加工の状態でとても強い光沢があり、両端が尖った形状をしています。
この形状のことをダブルターミネーティッドと呼びます。
それはさながらダイヤモンドの結晶に見えるということから、このようにハーキマー「ダイヤモンド」といった名称で販売されます。
今から約5億年前、現在のニューヨークは海の底でした。
このころ古代の地層の中で形成されたのがこの、ハーキマーダイヤモンド。
他の水晶と比べ、高温高圧の環境で成長したため、カーボンと呼ばれる内包物や気泡を有するものも多く、天然の内部亀裂であるクラックが入ったり、クラックによる虹が見られたりします。
形成過程の違いから他の水晶よりも透明度が高いと考えられていますが、ハーキマーダイヤモンド特有の照りの強い輝きは、普通の水晶では見られません。
またハーキマーダイヤモンドは石油を中に含むオイルインクルージョンが見られることがあり、これは紫外線を当てることで青白く光ります。
元々はニューヨークで採れるものの特徴と考えられていましたが、現在ではパキスタンやアフガニスタン産のものでもオイルインクルージョンが見られます。
基本的にはハーキマー地区で産出されたものをハーキマーダイヤモンド、それ以外の地区で産出したものをダイヤモンドクォーツなどと呼んだりします。
もしくはハーキマーダイヤモンド(〇〇産)といったように記載されることもあります。
ハーキマーダイヤモンドと言えど、ダイヤモンドではなく水晶であること、またハーキマーダイヤモンドといっても昨今はハーキマー地区以外で産出されたものも存在するわけです。
産出場所でお値段が変わったりしますので、産地にこだわる方は購入を検討する際にはご注意くださいね。
◇ハーキマーダイヤモンドについて詳しく知りたい方はこちらをどうぞ→
■水晶のお手入れ & クリーニング
水晶のモース硬度は7。
靭性(※靭性とは衝撃に対してどのくらい強く、割れにくいかを示す指標。)もあるので日常的に使用するのにも適しています。
しかし傷をつけたりカケさせたりしないためにも、ぶつけたり落としたりすることの無いよう、気をつけましょう。
普段は柔らかい布でのお手入れで十分ですが、汚れが気になる場合は食器用洗剤を溶かしたぬるま湯で優しく洗ってください。
その後は流水で洗い流し、水気をしっかりとふき取ります。
超音波洗浄機は、フラクチャー充填(見た目のクラリティや外観、安定性を改良するため、ガラス、樹脂、ワックス、オイルなどで充填すること。充填素材は、固形物(ガラス)から液体(油類)まで様々)や、処理されていない水晶であれば使用しても大丈夫です。
しかし水晶は急激な温度変化によってひび割れを起こす可能性があるので、蒸気洗浄は避けてください。
またフッ化水素酸やフッ化アンモニウム、アルカリ溶液は損傷を起こすので注意しましょう。
砂やホコリの成分というのは、一般的には微細な鉱物種のクォーツ(石英)などを含みます。
水晶は石英の仲間です。
モース硬度が7と比較的傷がつきにくい石であっても、ホコリや砂の中にもモース硬度7のものが含まれます。
その場合モース硬度7の物同士であれば、傷が付くこともあり得ます。
ですのでホコリがかからないように密閉できるものに入れ、他のアクセサリーやジュエリーと当たらないような工夫をしてください。
個別に密閉袋や布などで包んだうえで、ジュエリーボックスなどにしまう方法が良いでしょう。
【 まとめ 】
番外編】 4月 誕生石 水晶 ( クリスタル ) をご紹介してきました。
いかがだったでしょうか。
無色透明であるが故にダイヤモンドと比較されたり、代替品として扱われたりした水晶ですが…現在の私たちの生活には欠かせない鉱物でもあったんですね。
綺麗なだけじゃなくて、生活を便利にもしてくれている凄い鉱物。
宝飾品としての括りにこだわらなければ、実はどんな宝石よりも身近なものかもしれません。
水晶は誕生石として身につけたい場合も、実に様々なテイストのアクセサリー、ジュエリーが沢山あります。
沢山ありすぎて、きっと目移りしてしまうくらいです!
お値段的にはダイヤモンドよりもお手頃価格のものも多いですし、普段から気兼ねなく身につけるのにも使いやすいかもしれません。
ぜひぜひお好みの一点が見つかりますように…。
◇ダイヤモンドについてはコチラをどうぞ→