5月 誕生石 エメラルド はベリル(緑柱石)の仲間で、クロムとバナジウム、鉄を発色原因に持つ宝石です。
内部に傷のないものはほとんどなく、エンハンスメント(石が本来持っている性質を引き出すために行う処理のこと。)としてオイルなどに漬け込む処理が行われるのが一般的。
材料のロスをできるだけ少なくするため、ステップカット(エメラルドカット)に研磨されることが多いです。
【 はじめに 】

5月といえば…植物が新芽をだし、木々の葉が青々としてくる新緑の美しい季節。
ゴールデンウィークには端午の節句や子供の日があり、その翌週頃には母の日もありますね。
ウキウキするような陽気に、楽しいイベントが盛りだくさんの5月。
そんな5月の日本の誕生石は エメラルド (ベリル)(緑柱石)と 翡翠(硬玉)。
(こちらでは日本ジュエリー協会の掲載する誕生石を参照させていただいています。)
◇12か月の誕生石について詳しくはこちら→
新緑の季節にふさわしく、美しい緑のエメラルドと翡翠。
このふたつの石は、実はさらっとご紹介するのがなかなか難易度が高いのです…。
エメラルドだけでもだけでも書きたいことは沢山あるのに、翡翠に関しては硬玉と軟玉についてなど…ややこしい部分もあるので、今回はまずエメラルドにフォーカスしてご紹介していきます。
翡翠に関しては、また別の機会に書いていきたいと思います。
【 5月 誕生石 エメラルド (ベリル)(緑柱石) 】

宝石の女王とも呼ばれクレオパトラにも愛された、神秘的な緑色の宝石エメラルド (ベリル)(緑柱石)。
青空の元で燦然と輝く南海の海底の色に例えられる緑色は、エメラルドグリーンという色彩名称を生みだしました。
■モース硬度
モース硬度:7.5~8
■color
・エメラルドは基本的にとても傷が多い鉱物。
傷がないものは殆どないといわれるほど。
そのためひび割れや傷を埋めたり、発色をよくするためのエンハンスメント処理(石が本来持っている性質を引き出すために行う処理のこと。)が行われます。
これは精油やワックス、人口樹脂やUV硬化型接着剤、ポリマーなどで充填される処理が主です。
・エメラルドの色は、鉱物種ベリルの中でも緑~帯青緑色のものを指します。
ベリルの仲間には有名なアクアマリンやモルガナイトなども。
◇ベリルの仲間についてはコチラをどうぞ→

・エメラルドの中でも最も価値があるとされる色は鮮やかで暗すぎない色調の帯青緑色~緑。
透明度が高く、色が均一であること、また目に見える色帯がないと価値が上がります。
色相が黄色っぽかったり、青みが強かったりすると「エメラルド」とはよばれず、他のベリルに分類されます。
宝石の専門家の間でも、エメラルドとするか、そこまでの価値がないグリーンベリルとするかを線引きする色の度合いには正確な基準がなく意見が分かれます。
・エメラルドの発色原因はクロムやバナジウム、鉄。
各元素の含有量のバランスによって、結晶の色が決まるのです。
発色原因であるクロムの元素は理論的にはベリル鉱物内に混入することはありません。
しかし現実にエメラルドは存在し、クロムがベリルに混入しています。
この不思議な現象は大規模な地殻変動によって引き起こされたと考えられています。
ベリリウムを含んだ熱水の鉱脈が地殻変動によって、石灰岩に貫入し、熱水の鉱脈を通じてエメラルドの結晶が生み出されたいう訳です。
また発色原因のクロムといえば、ルビーを鮮やかな赤色にしている成分でもあります。

◇ルビーについてはコチラをどうぞ→
そしてクロムはサファイアの青の発色原因でもあるんです。
ルビーを赤に、サファイアを青に、そしてエメラルドを緑にする発色原因となるクロム。
同じ成分がそれぞれの色を発色させているのは、なんだかとっても不思議な感じがします。
宝石が示している色、私たちの目に映る色というのは、宝石内で一定の光の波長が吸収され、その残りが通過し光として出てきたものです。
私たちが認識している宝石の色は、一定の光の波長が吸収された後のものなんですね。
光のスペクトルの分光吸収によって色が生じているんですが、石によって吸収領域や特性があり、同じ成分を含んでいても発色に違いが出るという訳です。
・エメラルドの品質を決定する要因
エメラルドの品質は色、クラリティ、カット、カラット重量で決まります。
◇品質についてはコチラをどうぞ→
■産地
エメラルドは花崗岩やペグマタイト、片岩中にも発見されます。
主な産地はコロンビア、オーストラリア、インド、ブラジル、南アフリカ、エジプト、アメリカなどなど。
産地によって色味に違いがでるとも言われます。
■歴史

・紀元前2000年
最も古い宝石都市といわれているバビロン(バビロニア帝国の首都)では、エメラルドが存在していました。
・紀元前2000年~紀元後初期

この頃のエメラルドはクレオパトラ・エメラルド鉱山産出のものと考えられています。
絶世の美女として知られるクレオパトラ。
自身の目の色がエメラルドグリーンだったからか、エメラルドを好んで身に着けていたというのはとても有名なお話。
しかしクレオパトラの名前のついた鉱山があったなんて知ってる方は少ないのではないでしょうか。
このクレオパトラ・エメラルド鉱山、長い間物語にのみ残るエジプトの鉱山でした。
この鉱山群は紅海から約25キロほど内地の産地にあったようですが、中世期以降その位置は不明となり、幻の鉱山といわれていました。
しかし1818年フランス人によって遺跡が発見され、存在が証明されます。
・数千年にわたり緑色石の代表的な存在であるエメラルド。

他の古い貴石類同様に、緑の石は全て「エメラルド」とよばれた時代もありました。
・南アフリカ産の最古のエメラルドの年齢は29.7億歳(年)とも言われています。
■由来や言い伝え
・名前の由来は緑の石を指すギリシア語の「Smaragds」もしくはペルシア語の「Smaragdus」から派生した「Esmeraude」が「Emeraude」に変化したのち、16世紀ごろに現在の「Emerald」(エメラルド)になったといいます。

・古代エジプトでは豊穣の女神パビス、ローマでは愛の女神であるヴィーナスに捧げられたといわれています。
・神がソロモンに与えた貴重な石のひとつがエメラルドであったという伝説があります。
・エメラルドを身に着けていると、恋人の誓いの真偽を明らかにするといわれています。

・古代ローマの博物学者であり政治家、総督であったガイウス・プリニウス・セクンドゥス。
一般的には大プリニウスと呼ばれるこの方が書いたといわれるNatural History(博物誌)でエメラルドは、この緑以上に緑色のものはない、と書き記されています。
そしてそのころの宝石職人が「エメラルドを見ること以上に目の回復に良い方法はなく、柔らかなグリーンが疲労や倦怠感を和らげる」と言っていたことも記されています。
・かつては目や神経を休める安定剤と考えられていました。

・エメラルドは瑞々しい風景や豊かな緑に例えられることの多い石。
アイルランドは別名エメラルド島と呼ばれますし、アメリカのシアトルはエメラルドの都と呼ばれます。
・様々な岩石が時の流れとともに変化していくと共に成長するエメラルドの結晶は、液体や気体を石の中に含みます。
太古の液体や気泡を閉じ込めたエメラルドを観察する間に、この様子を見たフランス人科学者は、「石の中にジャルダン(フランス語で庭の意)がある」と表現しました。
・結婚20周年、35周年、日本では55周年を祝う記念の石です。
■誕生石「エメラルド」のお手入れ & クリーニング

エメラルドのモース硬度は7.5~8。
靭性(※靭性とは衝撃に対してどのくらい強く、割れにくいかを示す指標。)は普通~良好と言われます。
エメラルドは熱によって損傷する可能性があります。
また一般的にはエンハンスメントが行われている為、光や化学薬品によってその際に使用されたオイルや樹脂などが変化、劣化する可能性があります。
市場に出回っている90%以上のエメラルドがフラクチャー充填されているという統計もあります。
ですので、超音波洗浄機やスチームクリーナーは使用しないでください。
超音波洗浄機はフラクチャー充填された石を劣化させますし、スチームのような高温の蒸気はオイルや樹脂がエメラルドのフラクチャーからにじみ出てしまう原因になります。
エメラルドのお手入れは柔らかい布で拭く、もしくは中性洗剤で洗ったあとぬるま湯でしっかりと洗い流し柔らかい布で拭きあげます。
保管する際は紫外線を避け、他のジュエリーやアクセサリーとぶつからないように注意しましょう。
【 まとめ 】

5月 誕生石 エメラルド についてご紹介してきました。
いかがだったでしょうか?
爽やかな緑色が印象的なエメラルド。
一般的にエンハンスメントが行われているということを知ると、未加工であることにこだわる方など、とても残念がる方も中にはいらっしゃいます。
しかしエメラルドは多様なインクルージョンを持ち、そのインクルージョンによってむしろ風格が高まるとさえ言われています。
クレオパトラの昔から女性の装飾品としての歴史もとても長いですし、緑色の宝石の代表としてダイヤモンドに迫る人気で珍重されているのも頷けます。
高価な石のイメージがとても強いですが、品質によってはお手頃なものも出てきています。
5月が誕生日という方はぜひ一度エメラルドを手に取ってみてくださいね!