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5月の誕生石 ひすいを知っていますか?
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 5月 誕生石 ひすい ( 翡翠 )( ジェダイト )(ひすい)(ひすい輝石)(硬玉)は「東の宝石」とも呼ばれ、幽玄的な魅力を持つ石です。

古くから親しまれてきた石ですが、意外にもその素顔にはあまりスポットがあてられることがありませんでした。

そのため多くの誤解を持った石でもあります。

今回はそんな「誤解」を解くためにも、ひすいについて詳しくご紹介していきます。

【 はじめに 】

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日本では新緑の美しい季節でもある5月。

5月といえば…新緑が美しく、気候も穏やかで、ついつい外に出かけたくなってしまうような季節。

とはいえコロナの影響でなかなか自由に動けない毎日を過ごす方も多いでしょうか。

先日のブログでは5月の誕生石であるエメラルドについてご紹介をしました。

その時に5月にはもう1つ誕生石があることもお伝えしました。

5月のもう1つの誕生石は、エメラルドと同じようにグリーンのイメージのあるひすい (ジェダイト ) (本ひすい)(ひすい輝石)(硬玉)。

華やかできらびやかなイメージの強いエメラルドと比べると、こちらはまさに幽玄といった言葉がぴったりな石。

そんなひすいですが、実は多くの誤解を持った石なんです。

今回はそんなひすいにスポットをあててご紹介していきたいと思います。

◇日本ジュエリー協会の掲載する12か月の誕生石についてはこちらをどうぞ→

【 5月 誕生石 ひすい( 翡翠 ) 】

jadeite photo
ジェードと呼ばれるものがすべて「ひすい」ではない…?

東洋人にとってひすいは深く澄んだ緑色の石で、半透明であるというイメージがとても強いです。

そのせいかこのような特徴を持つ石全てが、産地である地名+ひすいで呼ばれたり、あるいはジェードと呼ばれます。

ですが大抵は別の鉱物であるということが多いのです。

■硬玉?軟玉?

ひすいの話をするときに必ず出てくるのが、硬玉、軟玉という名前。

硬玉、軟玉は組成的に見ても全く関係のない石。

ですが見た目が似ているためか、どちらも「ひすい」と言われているのです。

現在ひすい(ジェード)という言葉は、硬玉(ジェダイト)(ひすい輝石)と軟玉(ネフライト)という全く違う2種類の鉱物両方を含んで使用されます。

ジェードジェダイト(Jadeite)(硬玉)ネフライト(Nephrite)(軟玉)
本ひすいと呼ばれることもある語源は腎臓を意味するギリシア語Nephros
鉱物種輝石鉱物(パイロキシーン・パイロクシーン)角閃石鉱物(アンフィボール)
硬度6.5~7程度(モース硬度)6~6.5程度(モース硬度)
主な色濃淡の緑、白、紫(ラベンダー)、青、赤、橙、黄、黒など葉緑色から暗緑色、白や黒など
主な産地ミャンマーやロシアなどなど(下記参照)世界に分布:アメリカ、中国などなど
注意事項白いひすいを染色したもの(染め)に注意本ひすいと比較して価値が劣る
Image photo of China
ひすいの文化が栄えたと言われているのは中国ですが…。

ひすいの文化が最も栄えたのは中国。

5000年も前から様々な玉器が作られてきました。

このように書くと、中国はひすいの産地であるように考える方もいらっしゃいますが、中国では硬玉は産出しません。

主に軟玉であるネフライトが使用され、「ひすい」と呼ばれてきたのです。

硬玉が使用されるようになったのは18世紀頃から。

現在2種類の鉱物をひすい(ジェード)と総称しているものの、両者は全く別の鉱物であり、宝石としての評価も全く異なるのです。

(通常は硬玉の方が価値が高いものの、軟玉の中でも白く透明感のある最上質のもの(羊脂玉)は硬玉よりも高値で取引されることもあります。)

そのため硬玉(ジェダイド)をわざわざ「本ひすい」というように表記することもあります。

欧米ではいまだに硬玉と軟玉の混同が見られるといいます。

中国では両者まとめて「玉(ジェード)」と呼び販売されていた過去もあります。

現在の日本ではひすいというのは硬玉のことを指し英語でジェダイト、軟玉はネフライトと表記し、ひすいとは区別します。

◇ネフライトに関してはこちらをどうぞ→

■モース硬度

jadeite gemstone2
ひすいの硬度は?

モース硬度:6.5~7程度

ひすいはイノ珪酸塩鉱物(内部で針状~繊維状の小さな結晶が絡み合った鉱物)なので、靭性(※靭性とは衝撃に対してどのくらい強く、割れにくいかを示す指標。)もあります。

細やかな結晶の集まりなので衝撃に弱い方向が存在しないのです。

しかし天然ひすいの場合、ヒビや石目から割れる可能性もあるため取り扱いには注意が必要です。

■color

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どんなカラーバリエーションがあるんでしょう?

新緑の石、というイメージの強いひすい。

しかし実際は大きく分けて15色程度のバリエーションがあると言われています。

ピンクやラベンダー、半透明、白、青、黒、黄色、橙、赤橙などなど。

ひすいの結晶は化学的には無色です。

しかし石に含まれる不純物や他の輝石が発色原因となります。


例えばひすいの緑色。

2つの系統があるといわれていて、鮮やかな緑色の場合はクロム、それよりも落ち着いた緑色の場合は二価鉄が発色原因です。

また人気の高いラベンダーひすいは、日本のものならばチタンが発色原因であり、やや青みがかった色です。

黒いひすいならば炭質物、黄色や橙、赤橙の場合は酸化鉄が影響します。

(日本では橙~赤橙のひすいは産出していません。)

◇ひすいの色について詳しく知りたい方はこちらをどうぞ→

■産地 

Photo of the Hisui coast in Toyama
日本のひすいの産地はほとんどが険しい山の中ですが、富山のひすい海岸は世界的にも珍しい環境の産地。

日本でも産出するひすい。

特に有名なのは新潟県糸魚川と糸魚川周辺。

このほかにも富山や鳥取や兵庫、岡山、長崎、北海道や群馬などが名を連ねます。

しかし宝石として扱われるような品質のものは、主に糸魚川のもの。

また鳥取ではラベンダーカラーが産出します。

世界の産地としては、ミャンマー、ロシア、カザフスタン、アメリカ、グアテマラ、ドミニカなどなど。

中国で産出するのは軟玉(ネフライト)で、ひすいの産地ではありません。

ミャンマー産ひすいは18世紀に発見されてから、世界の9割ほどの産出量を占めているといわれています。

世界最大の原石として有名なのは糸魚川で発見された102トンのひすい。

ですがこの後2016年にパカン地区(ミャンマー)で175トンの原石が発見されました。

■歴史

jadeite gemstone4
宝飾品としてひすいを使った歴史は日本が最も古いといわれています。

・5000年前 縄文時代中期

日本では糸魚川で縄文人がひすいの加工を始めたといわれています。

これが世界最古のひすい文化(ひすいと人間の関わり)だそう。

この頃に作られたひすいの勾玉は遺跡などからも沢山見つかっています。

また最古の歴史書「古事記」にひすいについての記録が残っています。

調和・豊穣・忍耐・再生・命を意味する宝石として珍重され、祭祀や儀式に使われていたようです。

・弥生時代・古墳時代 

非常に珍重されましたが、奈良時代以降になるとなぜか記録が途絶えます。

糸魚川で産出したことすら忘れられ、遺跡などから出土するひすいが大陸から持ち込まれたものであると昭和初期頃まで考えられていました。

・1938年(昭和13年)

過去に糸魚川地方を納めていたという奴奈川姫(ぬなかわひめ)がひすいの勾玉を着けていたことに着目した相馬御風(そうま ぎょふう)氏。

知人である鎌上竹雄(かまがみ たけお)氏に糸魚川周辺にひすいがあるかもしれないという話をしたそう。

話を聞いた鎌上氏が糸魚川近くに住む親戚の伊藤栄蔵(いとうえいぞう)氏にその話をし、伊藤氏が試しに探してみたところ、緑色の綺麗な石を発見したのです。

これがひすいの再発見と言われています。

◇ひすいの再発見の詳細についてはこちらをどうぞ→

※現在糸魚川のひすいは保護地区にあり、採取が禁止されています。

・2016年 9月24日 

日本鉱物科学会が「国石」に選定しました。

古くから日本で使用されてきたひすいは考古学的に重要である点、また地質学的に見ても日本のような沈み込み帯のみでできるというひすいの特性から、日本ならではの石であると選定されたのです。

■由来や言い伝え

Kingfisher photo
ひすい(翡翠)の名前の由来と言われるカワセミ。

・Jade(硬玉・軟玉の総称)の語源としては、スペイン語の腹痛を意味する言葉「piedra de ijada」がフランスで「pierre de jade」に変化し、「jade」になったといわれています。

・漢字の国 中国ではひすいのことを「翡翠玉」(ひすいゆう)と表しました。

中国で翡翠=かわせみのこと。

かわせみは羽根が緑、おなかは赤、背から尾は青色をしています。

翡は赤色、翠は緑色を表し、それらの色をもったひすいの事を「翡翠玉」(ひすいゆう)と呼んだのです。

これが日本に入ってくるといつの間にか「玉」(ゆう)の石名を除き、色名を石名としてしまったのだそう。

・スペイン人が中央アメリカを侵略した際にジェーダイトを発見し、お守りなどに使うようになったといわれています。

スペイン人は腰の治療や腎臓病に効くと信じ、腰石、腎臓石などと呼んでいたそうです。

・東の宝石と言われ珍重されてきました。

これは西洋的な美的感覚と東洋的な美的感覚から表された言葉。

豪華絢爛なものを好む西洋的な感覚と、趣があり優美といった幽玄的なものを美しいと感じる東洋的な感覚。

ひすいは西洋で好まれるダイヤモンドやエメラルドとの対比に使われます。

◇ダイヤモンドについてはこちらをどうぞ→

■ひすいのお手入れ & クリーニング

jadeite bangle photo
きになる「ひすい」のお手入れ方法。

ひすいのモース硬度は6.5~7程度。

靭性(※靭性とは衝撃に対してどのくらい強く、割れにくいかを示す指標。)もあるので日常的に使用するのにも適しています。

しかし傷をつけたりカケさせたりしないためにも、ぶつけたり落としたりすることの無いよう、気をつけましょう。

普段は柔らかい布でのお手入れで十分ですが、汚れが気になる場合は食器用洗剤を溶かしたぬるま湯で優しく洗ってください。その後は流水で洗い流し、水気をしっかりとふき取ります。

普段から日常的に使用される場合は、使用後に必ず柔らかい布で拭き、埃や汚れが蓄積しないようにしましょう。

超音波洗浄機や蒸気洗浄は避け、酸や有機溶剤などの化学物質にはとても弱く損傷を起こすので注意が必要です。

またひすいは長期間使用せずに保管していると、表面が乾き劣化してしまう可能性があります。

あまり使用する機会がないような場合も、ずっと放置するのではなく、石の表面にオイルを塗ったのち、柔らかな乾いた布で乾拭きをするようなお手入れをすると長く綺麗な状態を保つことができます。

ひすいは「色が育つ宝石」と言われることもある宝石です。

身に着ければ着けるほど、美しく育つとか…。

これはもちろん汚れが溜まらないようにきちんとお手入れをして、使用していくことが大前提ですが、育てる楽しみのある石というのはなかなか他にないですよね。

鑑定書などに「ワックス加工がされている」旨が記載されることがありますが、これはワックス(オイル)で磨くと光沢が増すという性質ならでは。

この性質があるからこそ、身に着けることで人の脂がワックスの代わりとなって、ひすいの色が育っていくということなんです。

もし普段使いでなく、ジュエリーボックスなどで長期間保管しっぱなしのひすいがあれば、一度専門店でケアをしてもらうことをおススメします。

【 まとめ 】

Image of a woman who investigated jade
ジェダイトとネフライト、どちらもジェードと呼ばれていますが…。

 5月 誕生石 ひすい ( 翡翠 )( ジェダイト ) についてご紹介していきました。

硬玉であるジェダイトと軟玉であるネフライト。

過去にはこの2つが混同されたり同じ石であると考えられていたために、意図せず騙されてしまうという残念な事案もあったようですが、現代では鑑別技術の発展によって区別が可能になりました。

購入する際はご自身がどちらの石が欲しいのかきちんと確認することが重要ですね。

何となく年齢が上にならないと似合わなそうな印象のあったひすい。

値段的に高価なものだからそういったイメージもより色濃くなったのかもしれません。

しかし鉱物としては珍しく、「色が育つ宝石」と言われています。

それならばこの石を身に着けるのにまだ早い、ということはないのかもしれません。

もし5月生まれの方で迷っている方がいれば、早いタイミングから大切に手入れをしながら身に着けていってほしいと思います。

そしてご自身が年齢を重ねるのと共に、身に着けているひすいも少しずつ育っていく…。

愛着をもって一緒に歳を重ねるパートナーとしてひすいのアクセサリーを使っていくのも素敵ですね。

◇同じく日本の5月の誕生石、エメラルドについてはこちらをどうぞ→